新年のご挨拶:2015年も宜しくお願い申し上げます

2015.01.01ニュースリリース

 謹賀新年

旧年中は格別のご厚情をいただき厚く御礼申し上げます。
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
 
昨年は、日経平均株価が7年振りに18,000円台を突破し各企業の業績が上向き傾向になり、経済的にはリーマンショック前の水準に迫る兆しが見えつつあり、スポーツ界でも錦織選手を始め、若手日本人の世界での活躍が目立った年でもありました。
 
そのように少し余裕が出てきたが故に、各企業の取り組みは、過去の延長線上の人材開発・組織開発に戻るのか、逆に新しい人材開発・組織開発の取り組みにチャレンジするのか、その状況認識や施策の方向性が大きく違った年であったように思えます。
 
  • 人材開発・組織開発の問題の捉え方
状況認識や施策を検討する参考として、2008年にハーバード・ビジネス・レビューで掲載され、最近になって聞く機会が増えてきた、カネヴィンフレームワークという問題の複雑性の種類と変革手法の適性を、4+1の象限に整理した考え方があります。
 
カネヴィンが定義した問題の象限を幾つか紹介すると、以下になります。(明確な区分が重要ではなく、どの系の性質がどれだけ強いかが重要。)
 
1)「単純系」:因果関係が明確でパターンも明らかな場合。例)定型書類のミスの削減
⇒変革手法は経験者のベストプラクティスや他社のベンチマークなどが適切で、PDCAが重視される。
2)「煩雑系」:因果関係は明確だが、種類も多く特殊な分析が必要な場合。例)パソコンのエラー処理、定型業務の業務改善
⇒変革手法は専門家による分析やロジカルシンキング的な問題解決が適切で、Analyzeが重視される。
3)「複雑系」:因果関係が複雑で循環的で特定が難しく、かつ状況が刻々と変化するため過去のパターン分析が成り立たず、さらに人々の問題の見方や価値観が違うため問題の見方も解決の仕方も合意形成が難しい場合。例)環境問題、震災復興、昨今の多くの企業課題
⇒変革手法は対話的手法に基づき状況やビジョンを共有し、小さな試行錯誤と振り返りから適応解を生成することが適切で、Safe Fail(多数の小さな試行錯誤とそこからの学び)が重視される。
 
この区分で整理するなら、人材開発や組織開発に関する問題は、圧倒的に「複雑系」の問題の割合が増えてきていますが、景気回復とともに課題設定や解決策の策定を「複雑系」の観点で見て、Safe Failにチャレンジしたかどうかが、企業の取り組みを大きく分けたポイントの一つであると思います。
 
  • 「信頼」という社会関係資本の変化 〜状況変化の一例として〜
これまでの日本は、「信頼」という社会関係資本の高さが故に効率性と競争力を維持していた側面があるでしょう。個人的にも財布を落としても戻ってきたり、震災の当日に都内の人々が互いを尊重する様は日本の素晴らしさを感じました。一方で、国家や企業そして社会に対する「信頼」やそれを前提とする年金制度・企業の人事・組織運営などは、日本の和を大切にする文化的な背景と、右肩上がりの経済成長という特殊要因によって、積み上げられてきた側面があります。
 
一方で、コミュニティの崩壊やダイバーシティーの進展、長期的な意味での経済的な後退の予測は、その「信頼」一つ一つを不可逆的に崩壊させています。今年起こった食品業界やマスコミに留まらず、様々な企業の不祥事⇒コンプライアンスの強化⇒現場の疲弊という悪循環は常に起こっています。若手を始め現場にある未来の給与や雇用に対する信頼の無さ⇒短期・内向き・個人志向⇒組織の関係性や競争力の後退という悪循環は、大企業にも多く蔓延しています。
 
採用・育成・報酬・リーダーシップ・組織運営・人事制度などは、関係性や将来に対する信頼があった時期に原型が創られていますので、前提である「信頼」が減っていく傾向が明白である今、例えば「人を育成しない職場」、「世代間や部門間の断絶がある職場」、「誰もが短期志向&個人商店の職場」、「ミスや不祥事が多発する職場」など機能しなくなりつつある人事・組織領域の「複雑系」の課題に、どのように取り組んでいけば良いのでしょうか。
 
社会の前提が変わってしまっているので、単純に育成を制度化したり、飲みに行けば解決するわけでもなく、はたまた、「単に」対話すれば解決するわけではないことは明白です。現在の意思決定層が経験してきた、「過去」の解決策の多くは、現実的には機能しにくくなってきています。
 
  • 今、現実に起こっている小さな変化 〜弊社の取り組んだ事例から〜
では、どうしたら良いのでしょうか。強力なビジョンを持つ政治家や経営者に新たな枠組みを構築してもらう必要があるのでしょうか。実際には、「複雑系」の問題では、一人の天才によるグランドデザインは働かないのが常です。
 
それならば、スウェーデンのように、70年代以降に幾多の経済危機を乗り越えながら、一度崩壊した国家や社会に対する「信頼」を、市民レベルを巻き込んだ政治的な対話や制度化と情報開示によって、再度構築・蓄積した例から学べば良いのでしょうか。日本はスウェーデンとは違うので単純なベストプラクティスは機能しないでしょう。
 
思わず悲観的になってしまいそうな状況ではありますが、現実はそこまで悲観的ではないかもしれません。昨年私たちが支援させて頂いたクライアントでも、状況を「複雑系」と認知し、Safe Failを少しでも出来るような関係部署との調整をしながら、新たな取組を試行錯誤した企業は多数ありました。世の中にはまだそれほど広まっていなくとも、そういった意思を持って動いている現場の方々は沢山居ます。
 
例えば、組織開発の観点でいうと、とある大企業では、現場の忙しさや商品の多様化、ビジネス・モデルの変化によって現場での育成が機能しなくなっておりました。制度的な育成の強化や号令があっても、”やっている感”はあっても実際の変化はなかなか起きませんでした。過去の枠組みの「育成」を再現しようとしても機能しないのです。従ってビジョンを共有しつつも、答えは無い前提で各部署毎に自分たちが出来ることに取り組んだところ、幾つかの機能した取り組みが生まれました。そこから得られたヒントは、上司や社内のナレッジなどの内部・過去の情報からのフィードバックから学習を起こすモデルではなく、顧客のフィードバックから学習を起こすモデルに変化すると、自然と「育つ」状況が少しずつ生まれました。文章で書くと、簡単に見えてしまいますが、「育成」の概念が根本的に変わった瞬間でした。
 
事業開発の観点で言うと、とある中堅企業では、現場発で新しいビジネス・モデルを構築する取り組みをしていましたが、どんなに新しい事業や案件を企画しても、結局のところ発想自体も社内のこれまでの成功体験の延長線上であり、また判断やフィードバックする側も過去のナレッジや知恵に基づいて判断しているため、新しい事業も案件も生まれませんでした。その為、上記のように顧客のフィードバックから事業開発をする取り組みを全社的に進めたところ、幾つかの筋の良い事業案が生まれ始めました。その事業案を生んだチームの特徴は、顧客の要求やニーズすら聞かず、顧客(やその先の消費者)の日常の生活や業務に身を起き、その情報から根源的な問題への洞察を得たチームが殆どでした。
 
上記のどの事例も、
・複雑で答えが無い問題であることに合意形成をし、
・様々な試行錯誤をSafe Failを意識しながら実践し、
・自分達のものの見方を変える学習*が自然に起こった
ことが大切なポイントであったと思います。
*ここでいう学習は、学習する組織の分野でいうトリプル・ループ・ラーニングや、ベイトソンの言う学習Ⅲの意味で使っています。
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  • 2015年に向けて
2014年のToBeingsは、事業開発・組織開発・人材開発の分野でのイノベーションをキーワードに取り組んで参りました。
2015年は昨年の学びを土台にその動きを更に加速しながら、「複雑系」の問題領域において、Safe Failを通した学習をより効果的に起こす仕組みの構築に取り組んでいきます。また、昨年取り組んだタイの政治的な対話のファシリテーションのように、自分事としてアジアの「複雑系」の社会課題にも取り組んでまいります。
 
 
株式会社ToBeings 代表取締役 橋本 洋二郎

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