セミナーレポート|2022/6/23【組織開発実践者に聴く!】組織活性化を進める上での壁とその乗り越え方#1

■開催日時/概要

【組織開発実践者に聴く!】組織活性化を進める上での壁とその乗り越え方#1

日程:2022年6月23日(木)16:00〜17:30
場所:オンライン(zoom開催)

企業内で組織活性化に向けて日々、変化と向き合っている「組織開発実践者」を応援し、仲間を増やしていきたい───そうした願いを込めて、組織活性化の壁と乗り越え方に本音で向き合うイベントを初開催しました。

登壇いただいたのは、株式会社ZOZO 組織開発ブロック長 小金 蔵人さん。

SNSやオンラインイベントでも注目を集め、組織開発の第一線で活躍されているエバンジェリストです。ToBeings代表の橋本とともに、現場から見えてくる組織開発のリアルな姿について考えます。

■登壇者プロフィール

小金 蔵人 さん
株式会社ZOZO 技術戦略本部 技術戦略部 組織開発ブロック ブロック長
組織開発アドバイザーSTANDBY代表/組織開発エバンジェリスト

1998年に大学卒業後、味の素株式会社に入社し、営業マーケティングに従事。2006年にヤフー株式会社へ転職し、新規ビジネス開発・サービス企画のリリースを経験するかたわらで各種組織活性プロジェクトを推進。2016年に希望して人事部門に異動後、全社の人材開発・組織開発を担当。1on1ミーティングをはじめとしたピープルマネジメントツールの推進や管理職のマネジメント支援と並行して、現場の組織課題解決をサポート。

2019年に個人での組織開発アドバイザリー事業と組織開発エバンジェリストとしての情報発信を開始。2020年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO)へ転職し、現在は全社およびクリエイター部門の人事企画・人材開発・組織開発に携わっている。
橋本 洋二郎 さん

株式会社トゥビーイングズ 代表取締役社長 

一橋大学法学部卒
米Processwork Institute紛争解決&組織変革ファシリテーション修士過程修了、米シンギュラリティ大学Executive Program卒

外資系戦略コンサルティングファーム(ジェミニ・コンサルティング、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン)、株式会社ザマー代表取締役を経て現職。コンサルティングファームでは、自動車、教育、IT関連のプロジェクトを中心に、経営ビジョン策定、新規事業戦略構築、マーケティング戦略を手がけるとともに、その戦略に基づいた新サービスの導入支援やビジネスプロセス再構築、ITシステムの再構築などの実現支援策を中心としたコンサルティング活動を展開。

現在、株式会社ToBeings(トゥビーイングズ)の代表として、組織進化のプロセスファシリテーションを通した、組織×人×事業のトランスフォーメーション支援を行い、過去に手掛けた変革プロジェクトは70社以上に及ぶ。場にある目に見えないうねりやコンフリクトを推進力に転換するファシリテーション、自己組織化によるイノベーションが起こる全社変革のプロセスデザインを得意とする。

みなさんと一緒に考える「組織開発のお困りごと」

登壇者の紹介の後、3〜4名の小グループごとに分かれてコミュニケーションを取ります。ブレイクアウトルームで、参加者同士の自己紹介を行ない、今の気持ちをシェア。セミナーに対する期待も高まりました。

まずは、小金さんがTwitterを通じて集めていた「問い」を紹介。組織開発について気になっていることや、世の中の変化を受けて組織内で起こっていること、より良い組織にするために困っていることなどを事前に募集したものです。

Q|組織開発は重要な取り組み・・・なはずなのに。
社内を横断するプロジェクトを行なっています。探究・探索を意識した取り組みを進めていますが、現場からの反応は微妙です。「他部門との交流やアイデアを出すのは楽しい。でも会社に貢献できているのかが不安。評価されないし、時間だけが取られている」との声に、苦労しています。

小金さん:

「やっていることの正しさが分からない。自分のやっていることは、直属の上司に伝わっているのか?」と悩んでいる方、多いですよね。ただ、現場にこうやって悩んでいる人がいることこそが、大切だと思います。

橋本さん:

まさにそうですね。悩んでいる人は、そもそも組織開発の素養があります。組織開発で扱われる課題は、“誰もボールを持っていない”課題であることが多いです。既存の枠組みの中から、新しい価値を生み出そうとしているのだから、難しくて当然。

エアポケットのようになってイライラしたりすると思うけど、むしろその「うまくいかない感覚」が組織全体で起こっていることの、縮図ではないでしょうか。

例えば部門ごとに数字が降りてきて、メンバーそれぞれにミッションが与えられるとします。その構造の中に収まらない仕事は、やらなかったりしませんか。「誰がその責任を取るんだ?」となって、もめたりする。「部長、なんでこんな仕事を引き受けたんですか!?」と言われたりするわけです。

だからまず小さな取り組みから始めてみるのは、どうでしょう。部門内で話をしてみるぐらいでスタートするのが、圧倒的にいいと思う。「我々から変わらないと!」というトーンよりも、「エアポケットなんて、取れなくてもOK」ぐらいで行きましょう。

小金さん:

組織開発の仕事って、結局「対話と合意形成」だと思うんです。ヒトとコトが繋がっていない部分に入っていって、対話しながら拾いに行くというか。

本当は専門家がいない組織を目指したいんですよ。事業会社の中でより良い組織を作っていこうと思ったら、メンバー同士でゴールを握って役割分担し、進める状態にしたい。そのために「落とし物されていますよ」と拾って、元の持ち主に返すのが、組織開発の仕事だと思いますね。

Q|上司にも、当事者意識を感じてもらいたいのに。
上司や経営陣にも、危機感や当事者意識を持ってもらいたい。リーダーシップを発揮してもらい、組織活性化にうまく巻き込んでいきたいけれど、しっくりきていません。

橋本さん:

「当事者意識」は重要ワードですね。実はトリッキーだし、分かりやすいようで複雑な言葉です。よくいろいろなクライアントにインタビューすると、みんな言いますよ。「こういう組織にしたい。こんなことがしたい。でも、当事者意識がないんです!」と。

そうやって相手を責めている時の、自分の手を見てください。人差し指は相手を指しているけれど、他の指は自分自身を指していますよね。「この人が当事者ではない」という構造を、自分自身も作り出していることに気がつかずに、相手だけを責めているんです。組織の中で起きていることは、相互作用によるものだと認識しないと、本当の意味で解決はしないでしょう。

小金さん:

一体感のない職場、ありますよね。経営陣は「よく分からない」と言い、人事は「課題もKPIも分からない」と言う。それを眺めていて、どれも共通しているなと思うのが、「常に相互作用で起こっている。しかも他責のムードが漂っている」ことです。うっすら全員、共犯者で起こっているんですよ。

「上司がちょっと・・・」と言っている人は、部下力も低いもの。結局お互いが他責になります。だから、「対話しよう」といつも提案しているんですけどね。

Q|正解主義が強い社内の空気感。もっと柔軟になりたいけど。
社内が「正解主義」のようになっています。もっと柔軟に、問い直すことや前提を疑うようなことを大切にする組織運営がしてみたいです。そのための道筋や、考え方などを探究したいと思っています。

橋本さん:

「正解主義」になっている背景には、トラウマがあるのかもしれません。失敗体験が全員に共有されていると、なかなか思い切ったことはできないものです。恐れがあることに、OKを出していく。そこに入り口があるような気がします。

小金さん:

人と組織は相似系です。正解主義に陥っている理由は、なんでしょう?どんな願いと恐れがあるでしょうか。願いは、根底から手に入れたいもの。恐れは、手にしているけど絶対に失いたくないものです。自分の心のホラーストーリーに根ざしているものが、組織の中で学んだ「何か」と繋がっている。そこにヒントがあるかもしれません。

参加者からの声

終了後のアンケートでは、普段から組織開発に向き合い、試行錯誤されている様子が伝わってきました。

ブレイクアウトルームに分かれて、参加者同士で対話をする時間も設けられ、活発な意見交換をされていたようです。普段は接する機会のない、他業界・他業種の方々と交流できるのも対話型セミナーの魅力と言えます。

「組織は、対話と合意形成の連続だと思う」

組織には、多様な人々が集まっています。だからこそ「このままでいいのか」と悩む葛藤があり、最初からすべてが変わるような奇跡は起きません。

その葛藤を打ち砕くための最初の杭が、「対話」なのではないかと感じました。まずは自分の近くにいるメンバーと対話し、組織に対して何を感じているのかを聴いて、合意形成をしていく。その繰り返しによって得られた気づきは、また新しい杭となって、次の葛藤を打ち砕く力になります。そうして少しずつ、組織は変わり、進化していくのでしょう。

「組織は、対話と合意形成の連続だと思う」と語る小金さんの言葉に、勇気づけられました。

Writing 林 美夢(ライター)

この記事を書いた人