「働き方の未来について対話することで、経営陣のみならず組織全体に大きなパラダイムシフトが起こるのだと思 いました」ーアデコ株式会社様

(左)アデコ株式会社 人財紹介事業本部 本部長 板倉啓一郎様 (左中)同 取締役 ピープルバリュー本部長 土屋恵子様 (右中)ピープルバリュー本部 ディベロップメント部 部長 籾山直威様 (右)ピープルバリュー本部 ディベロップメント部 石田かほり様

「プロジェクトを経て、経営メンバーは 30 年後の未来や働き方に対して、より真剣 に考えるようになったと話しています。(中略)…現場から集まった 20 名近くのデ ザインチームは、自分の働き方を変えるのはもちろん、職場の上司や部下、あるい は家族やお客様と、働き方の未来についての対話を進めています。チームメンバー の周囲にまで、加速的に変革が広がっている実感があります。」

在宅制度やオフィス改革などといった目に見える対 策に目が行きがちな「働き方改革」。アデコでは、 それを働くことの価値と再定義し、全社の風土や文 化を目に見える形で変化させる活動として行ってい ます。その取り組みや成果についてお伺いしました。

取締役 土屋恵子様

̶本プロジェクトの背景となる御社の現状を教えてください

アデコは、スイスに本社を置き世界60 の国と地域で事業を展開する世界最大の人財サービス会社です。弊社のグローバルのお客様では、AI(人工知能)やロボティックスのような話題が毎日当たり前のように議論され、それがアデコのグローバルのマネジメントチームでも、日常的な問題意識になっています。ところが、日本のマネジメントチームにおいては、日本や業界の事情もありますが、それらの話題の緊迫度はかなり違うという実感がありました。

また、働き方改革に関しても、既に制度も含め様々に試行錯誤してはおりましたが、人材業界に身を置くアデコとしては、在宅制度やリモートワークの導入といったレベルを超えて、2030 年の未来を見据えた自分たちの本質的な働き方の変革・再定義を推進し、人材業界をリードする企業としてそれを体現することの必要性も感じていました。

社長やCFO ともそのような問題意識は共有しており、日本のマネジメントチームを皮切りに、2030 年の未来を見据えた、一歩上の全社の働き方改革をしていこうと考えておりました。

ただ、一般的にそういった未来の対話をマネジメントチームでしようとすると意外にうまくいきません。本来は正解の無い領域のはずですが、見通しが不確実な故に著名な権威にアイデアを求めてしまったり、対話のプロセスも、社長をはじめ発言力や知識のある人の意見に偏ったりしてしまうことが多くあります。そういったこともあり、テクノロジーや社会の変化などに関する良質なインプットを提供してくれながらも、経営陣と同じ目線で対話をファシリテートしてくれるToBeings さんに企画を相談させて頂きました。

フェーズ1 のマネジメントチームのチェックイン。最初の頃はまだ固かった。

̶本プロジェクトの内容を教えてください

本プロジェクトの第1 フェーズでは、経営陣自身が2030 年の未来を見据えて働き方の未来を探求し、ビジョンを生み出すとともに、それを自分たちでまずはやってみることをゴールにしていました。ありがちな“形だけ”、“制度だけ”の変革ではなく、本当に経営陣が真正面からこのテーマに向き合おうとしていろいろな企画を考えました。

企画をしている際に、最初はテクノロジーの最前線や、新しい働き方を実践している最先端の企業にいって、ラーニング・ジャーニー(現場に行き、変化を実際に体験し、相手方と深い対話をすることで、新しい視座を生み出す)をしようというアイデアもありました。一方でそれでは企画が重くなって時間がかかりそうなので、「まずはすぐ出来ることを」やろうという方向に転換し、マネジメントチームで計3 日間の対話会を行いました。

3 日間の内容は、第1 回はシンギュラリティや2030 年に起こりうる社会変化のシナリオを様々な角度から考えるとともに、それが人材業界や私たちの働き方にどのような影響がありうるのかを、皆で探求しました。第2 回は、今既に起こっている未来の萌芽と呼べるような事例を数多くあつめ、様々な前提がくずれていく中で、私たちがどのような働き方・生き方の価値観を選択していくのかを話し合いました。その上で第3 回は、働き方のビジョンを皆で生み出し、即興劇の役者の方などの力も借りながら、右脳や身体性をも活かしながらビジョンを身体に落とし、最後は経営としての方針やアクションへと落とし込みました。

フェーズ2 では、フェーズ1 の結果をうけて、このプロセスをもっと現場の管理職やメンバーにも体験して欲しいと考え、全国の管理職からメンバーまで様々な立場の人をデザインチームとして20 名弱集めました。その多様性のあるチームメンバーで、未来を見据えた働き方の未来や大切にする価値観を探求しました。そして机上の議論に留まらず、翌日からそれを実践することで、現実にぶつかる文化やプロセス上の壁を認知し、それを乗り越えるために試行錯誤しようという設計にしています。

̶プログラムを実施してみての率直な感想や成果は?

プロジェクトを経て、経営メンバーは30 年後の未来や働き方をより真剣に考えるようになったと話しています。つまり、AI やロボティックスなどのテクノロジーの未来や、30 年後の日本にまで意識を向け、そこから21 世紀の働き方を考えると、色々なことがつながって見えてきた。そうすると日々流れる、業界の外の情報や未来の情報にもアンテナを張り、さらに視点が広がるというサイクルが回るようになった、と話す人が多く出たのが嬉しかったです。

プログラムの実施期間中から既にいろいろな成果がありました。ある人は、ワークショップで、まずは自分が本部長として「ワークフロムホーム」をやってみると言い出し、実際に数日後に試したそうです。そうしたら、仕事をする以前に、奥様が「この部屋でテレビ会議をやるの?」と難色を示されたなどと笑いながらシェアをしてくれました。そういった失敗を恐れずに、楽しみながらの試行錯誤が自然発生的に起こったことも今回の特徴でしたし、冗談半分の奥様の発言の背後には働き方改革をしていく上での重要な示唆がいくつも含まれていると思います。

また、ある人は家族と対話しようと、息子さんと話したそうです。将来何になりたいのか?と訊いてみたら、何も考えていないと思った息子が思った以上に将来について深く考えていることに驚いたそうです。さらに、「お父さんは会社で何をしているの?」と尋ねられたことがきっかけで、もっとチャレンジしようと思ったそうです。そういった結果をオープンにマネジメントチームでシェアできたことも、雰囲気が大きく変わるきっかけになりました。

その他にも、ワークプレイス変革や働き方のダイバーシティーなどは、頭では理解しているつもりだったが、初めて自分ごととして腹落ちしたという人もいました。そういったこともあり、マネジメントチームの普段の会話のなかに未来の社会や業界の変化、及びテクノロジーについての話題が頻繁に上がるようになりましたね。働き方だけではなく、事業を率いるリーダーとしてもそれはありがたい変化でした。

何より、AI に多くのことが代替されてしまうとした時に、自分たちが本質的に提供しうる価値はなんだろうかと考えて対話し、また、会社人だけではなく個人として働くことの意味を考えて対話したことで、とてもリアルなビジョンが生まれてきたと感じています。

さらに良かったことは、正解のない未来を対話するプロセスを通して、マネジメントチームのコミュニケーションの質が大きく上がったことです。未来は誰も予測が出来ないからこそ、立場や役職を超えてフラットに話せるようになる必要があります。また、私たちは常に自分たちの先入観や固定概念を未来に投影してしまうので、どんなに知識や発言力がある人でも、自分の仮説を保留して考えることが必要です。また、新しいアイデアや視点というのは、落ち着いて仕事をしたり物事を考えられる場が無ければ生み出せません。

一般的に、マネジメントチームがそういった理想的な対話を出来るようになるには、かなり高いハードルがあるのですが、今回のプログラムを通して、そういった理想に大きく近づいた感じがしました。例えば、「◯◯だ!」と断定した人が、急いで「かもしれない。」と笑って言い直すのが流行りました。また、未来のトレンドなど知らないことを話すときは、無意識に“無知だと思われる不安” を感じるので、発言やリアクションが無くなりがちです。それに気をつけようと、皆が人の発言やインプットにまず「へー!」というリアクションをするようになるなど、とても楽しい雰囲気が作られ始めました。


未来のコラボレーションを体感するワーク

未来の働き方を即興劇で表現するシーン

2035 年までの未来年表の発表

̶フェーズ2はいかがでしょうか?

フェーズ2はデザインチーム方式にしたので、組織の縮図となるような様々な立場の人が集まりました。今日も皆の対話を聴いていて、会社人としての服を脱ぎ、家庭や人生などその人のすべてで働き方を捉えているのを見て、感動していたところです。すでにこのデザインチームの一人ひとりが、自分の仕事だけではなく、家庭や人生も持ち出して、どう働きたいか、どう生きたいかを考え、家族や同僚などの大切な人との関係を踏まえながら、新しい働き方を実践しはじめています。

また、実践しているからこそ、具体的な課題が見えてきます。例えば、ある部門でリモートワークを推進すると、一見最初はうまくいくのです。ところが、よく現場を見ると、そのチームの固定電話宛に沢山の電話がかかってきて、それを隣のチームがカバーしてとってくれている。それはとても素敵な助け合いなのですが、その構造が固定化してくると、やはり不公平感がでてきて、申し訳ないのでやっぱりオフィスに出てきてしまう。固定電話を無くせばいいのでは、とやってみてもお客様との関係性や、基本的な仕事の完結の仕方が変わらないと、やっぱり元に戻ってしまう。そういうことを通して、今まで目に見えなかった関係性や習慣、仕事の進め方などに、一つずつ気づいて、ありたい未来の働き方に近づける試行錯誤をしています。

同時に、変革の輪が、大きく広がっているのも感じています。現場から集まった20 名近くのデザインチームは、自分の働き方を変えるのはもちろん、職場の上司や部下、あるいは家族やお客様と、働き方の未来についての対話を進めています。チームメンバーの周囲にまで、加速的に変革が広がっている実感があります。特に枠組みも無ければ指示もしていない実験段階でこうですから、今後さらに広がっていくのが楽しみです。

̶なぜ、このような変化が起こるのでしょう?

もちろんToBeings さんが安心・安全な場を作って、仕事だけではなく、その人の後ろにあるもの全てを持ち出せるようにしてくれていることは確かです。時々刻々と変わる世相を上手くワークショップに反映してくれますし、「会社が」「上司が」と自分以外が変わらねばとなってしまいがちなところを、自分たちが出来ることや変えられることに自然と目が行くように、自分たちのパワーに気づくようにしてくれています。

もちろん、そういったことが前提にはなるのですが、このテーマ自体の面白さもあると思います。この働き方というテーマが皆にとって自分事でかつ根源的なものです。人生まるごと、家族まるごとの単位で、本当はどうありたいのかを真剣に考えることで、そこから導かれる本音の理想の“働き方” が、人々に主体的な変化をもたらすのだと思います。


フェーズ2 のデザインチーム 各現場の多様な立場のメンバーが集まった

̶ToBeings の特徴や、パートナーとして選んでいる理由は?

マネジメント向けのワークショップでは、2 ヶ月弱で企画から実施まで行うなど無理な対応をお願いしましたが(笑)、私たちの状況に合わせて、いつもフレキシブルに設計してくれるところでしょうか。短納期という意味ではなく、今回どうしても4 月にやりたいという状況があるなかで、限られた時間の中で出来る現実的なベストは何かというスタンスでいつも相談に乗ってもらえます。20 人弱のデザインチームというのも、なかなか出来ないですよね。

また、決められたプログラムをやるという感じは一切なく、その日その場の皆の雰囲気や状況に合わせてテーマも内容もテーラーメイドしていく。もちろん、フェーズ2 でも、フェーズ1 から数ヶ月での社会の変化を資料にアップデートし、参加者の違いに合わせて出し方も大きく変えてくれています。ToBeingsさんが等身大の姿を見せてくれていることも、ありがたいです。多様な所属の方を含めたグローバルのチームで、リモートワークを実践されているなど一歩先の姿を見せてくれるとともに、自分たちの失敗談やぶつかってる壁などもオープンにシェアしてくれるので、参加者もオープンになりやすいですよね。

今回、ワークショップに参加した人はマネジメントチームや、現場の管理職といった数十名なのですが、その周辺にいる数百人の部下や職場や家庭に影響をあたえることをイメージしながらワークショップをデザインしたり、ファシリテートしてくれていることがとても伝わってきました。その意味でも、組織の大きな変化につながっているなと感じており、今後も引き続き一緒に変革を進められればと思っています。

ー今回のプログラムの感想やコメントをお願いします。

川崎健一郎社長:
テクノロジーだけではなく価値観も激変する現代において、常に最新の情報や刺激を得ることは重要で、今回のマネジメントチームでの対話はそのような貴重な機会になりました。またマネジメントチームでの横のコミュニケーションが起こるようになったのは、とても大事な変化で、一歩上のステージに上がることができたと感じています