ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社
⼈事総務本部⻑ バスマジェ詩織さん
⼈事総務本部 ヒューマンリソース ⼈事マネージャー タレント&オーガニゼーションリード
岸本しのぶさん(退職済み)

ユニリーバ・ジャパンは1964年に世界最⼤級の消費財メーカー、ユニリーバの⽇本法⼈として設⽴された。以来約60年にわたり、⽇本の消費者に「ラックス」、「ダヴ」、「ネクサス」、「プラウドメン」「ドメスト」など、ビューティ&パーソナルケア、ホームケアのブランドを届けている。
2024年9⽉、エド・ブリオラさんがユニリーバ・ジャパンの新社⻑に就任し、新しいリーダーシップチームが⽴ち上がった。そのタイミングで、ToBeings は⼈事総務本部⻑のバスマジェ詩織さん、⼈事総務本部 ヒューマンリソース ⼈事マネージャー タレント&オーガニゼーションリードの岸本しのぶさんと⼀緒になって、新しいリーダーシップチームのチームビルディングを⽬的としたオフサイトミーティングを実施した。
ユニリーバ・ジャパンは、なぜToBeingsをパートナーに選んだのか。2⽇間のオフサイトミーティングは何がポイントだったのか。具体的にどのような成果を上げたのか。その後、リーダーシップチームはどう変化したのか。バスマジェさんと岸本さんに詳しく伺った。
新社⻑のもとで約半数のリーダーシップチームが⼊れ替わり、チームビルディングが急務だった

――2025年1⽉にオフサイトミーティングを実施した背景を教えてください。
バスマジェ:2024年は、ユニリーバ・ジャパンにとって本当に激動の1年でした。まず2024年9⽉、エド・ブリオラがユニリーバ・ジャパンの新社⻑に就任し、リーダーシップチームも新しいメンバーになりました。
私はいま⼦育て中なのですが、幼い⼦どもの成⻑と同じくらい、⽇々の変化が⼤きかったです。
⼀⽅で、⽇本市場は少⼦化などのために難しい状況が続いており、私たちのチャレンジは決して簡単ではありません。
さらに、新しいリーダーシップチームの中には、他国から来たばかりで⽇本のチームと働いたことのない者もいました。
そのようは背景から、私たちには、新社⻑を含めたとリーダーシップチームが⼀致団結し、⼒を合わせるための「チームビルディング」が急務でした。全員の意識を⾼め、気持ちを⼀つにする必要があったのです。そこで2024 年10 ⽉、私たちはリーダーシップチームを強固なワンチームにするためのオフサイトミーティングをしようと考え、ToBeings様にお声がけしました。
左脳と右脳の両⽅をバランスよく扱えるファシリテーターが必要だった
――なぜ皆さんはToBeingsをパートナーに選んだのでしょうか?
バスマジェ:正直に⾔って、⼤きな決断でした。なぜなら、ToBeings さんは初めて組むパートナーであり、⼀度もコンサルティングをお願いしたことなかったからです。当然ながら、いきなりこれほどの⼤仕事を任せてよいのだろうかという恐れはありました。
ただ⼀⽅で、今回のオフサイトミーティングが極めて重要で、その成功のカギがファシリテーションにあることは明らかでした。ToBeings の橋本洋⼆郎さん、⼟屋恵⼦さんと実際に話してみて、いまのユニリーバ・ジャパンにフィットするファシリテーターだと感じました。私たちユニリーバは、論理的証明や⾔語化が⼤好きな左脳派のタレントが⽐較的多い集団です。しかし組織開発には、右脳をフル回転して、⾔語以前の無意識やイメージを扱うスキルが⽋かせません。私たちのオフサイトミーティングには、左脳と右脳の両⽅をバランスよく扱えるファシリテーターが必要だと強く感じていたため、橋本さんと⼟屋さんはまさに適任者でした。もちろん不安はあったのですが、最終的には私の直感でToBeings様に依頼することを決断しました。
――これほどの急ピッチでオフサイトミーティングを実施するのは⼤変でしたよね。
バスマジェ:本来なら、もっと綿密に準備した上で開催するのが普通です。しかし、今回は新しいリーダーシップチーム結成後、すぐにオフサイトミーティングを⾏うことに⼤きな意味がありました。なぜかというと、最初からビジネスリーダーたちが⼀枚岩になっていないと、ビジネス変⾰や組織変⾰を加速できず、現場に不安を与えてしまうからです。とにかくスピーディーなチームビルディングを最優先とし、アクションをとる必要がありました。
私たちの今後2〜3年を左右する⼤きな取り組みとして、新社⻑のエドもたくさんのサポートをしてくれました。彼⾃⾝も、新しいリーダーシップチームとの信頼関係と協⼒体制を早急に築き、皆とどんどん議論していきたいと思っていたためです。
その後に⽣まれた「変化の原型」が準備段階ですでに芽⽣えていた

――オフサイトミーティングを実施する前に、私たちは事前準備として、エド新社⻑とミーティングし、全リーダーにもインタビューしました。事前準備で印象に残っていることはありますか?
バスマジェ:事前準備の段階で、エドがオフサイトミーティングへの期待や起こしたい変化について熱く語った際、橋本さんが「エドさんの想いには共感します。しかし、エドさんの想いに基づいてオフサイトミーティングをデザインすれば、他のリーダーには必ず『やらされ感』や『変えさせられる感』が⽣まれます。それではワンチームにはなれません。オフサイトミーティングのような場は、ゴールからの逆算で設計してはダメなのです。そうではなくて、リーダーシップチーム⼀⼈ひとりの想いと気づきが醸成される場にしていきましょう」と、エドにしっかり伝えてくれたことが印象的でした。
エドは、この橋本さんの発⾔を聞いて、橋本さんへの信頼が芽⽣え、安⼼して少し⼒が緩んだようでした。⾃分だけが頑張ってもうまくいかないことを理解したのだと思います。この後、エドが「あとは橋本さんたちに任せるからいい場にしましょう」と⾔ったことで、⼀気に話が進み始めました。そして、⼀⼈ひとりが⾃分の想いや主体性を信頼しながら、全員で⼀丸となって前に進む状態を醸成しようという空気に変わってきたのです。
岸本:その点は、私も⾮常に重要だと思います。橋本さんが、オフサイトミーティングの最中に「このミーティングは、エドさんのために⽤意された場ではありません。バスマジェさんのためにやっているわけでもありません。私と⼟屋は、誰かに肩⼊れしたり、特定の落としどころを⽤意したりしているわけではないのです。私たちは、このリーダーシップチームに、コーチのように関わっているのです」と発⾔したのをよく覚えています。この⾔葉が、全員の⼼理的安全性を⾼め、皆のやる気に⽕をつけたからです。
オフサイトミーティングのような場では、多くの参加者が「どうせ裏側では落としどころを⽤意しているのでしょう」といった疑いを抱いているものです。だからこそ、この橋本さんの発⾔には⼤きな意味がありました。
バスマジェ:その後は、各リーダーへのインタビューや社内⼿続きなどを、通常では考えられないスピードで進めました。私⾃⾝が「絶対にやる」という強い想いを持って動いていたので、周囲も私の熱意に動かされて、最⼤限の協⼒をしてくれました。このときの皆さんの協⼒は本当にありがたかったです。
――エドさんとの会話からここまでの⼀連の流れに、その後に⽣まれた「変化の原型」がすでに芽⽣えていましたよね。
バスマジェ:そうですね。そして、それはオフサイトミーティングで⽬に⾒える変化になり、いまもその変化の勢いは強まりつづけています。
コントロールせずに場をファシリテートできる勇気と⾃信―だからこそ参加者が信頼し、主体的な変化が起こる
――ToBeingsの伴⾛やファシリテーションの感想や印象を教えてください。
バスマジェ:改めて⾃分の直感を信じて、ToBeings 様にお任せして本当に良かったと思っています。橋本さんと⼟屋さんが、⽬に⾒えない皆の無意識や雰囲気を丁寧に汲み取って、左脳優位のメンバーにも上⼿に消化できるように説明しながら、場の空気を作っていく⼿腕に感⼼しました。私たちの様⼦を⾒ながら、介⼊すべきところには介⼊し、そうでないときには良い意味で放置してくれるバランスが素晴らしかったです。そうした2 ⼈のあり⽅によって、皆の主体性のスイッチが⼊った気がしています。1⽇⽬の進捗の速さを⾒て、2⽇⽬のプログラムをガラッとゼロから変更してくれたのも嬉しかったです。⾃由度の⾼いプログラム設計に感謝しています。
岸本:私たち⼈事はファシリテーションの専⾨家でもありますから、実は今回、外部のファシリテーターに依頼するかどうかはずいぶん迷ったのです。これは私たちだけでなく、⼈事の皆さんが常に悩むことではないかと思います。今回ToBeings様のような外部のプロだからこそ、皆が会社を客観的に観察できる場を作れるのだと感じました。
何よりも、場をコントロールせずにファシリテートできる勇気と⾃信と、場の参加者への信頼に驚きました。さらに、そうやって⽣まれたムーブメントを、2⽇⽬の最後に私にバトンタッチして、ファシリテーションを任せてくれたのも嬉しくて印象的でした。そうすることで、私たちは⽇常に再接続できたのです。こういう⾵に細かな気遣いや思いやりができる⼈たちをファシリテーションのプロというのだ、と感⼼しました。