「ここまで一人ひとりに伴走してもらうと、参加者も現場も本当に変わるよね」ー帝人株式会社


(真ん中左)帝人株式会社人事・総務本部採用·人財開発室長藤本治己様
(真ん中右)帝人株式会社人事・総務本部組織・キャリア開発グループ兼採用・人財開発グループ兼改善活動全社事務局久保田はる菜様
(左)株式会社ToBeings 橋本洋二郎
(右)株式会社ToBeings 山内英嗣

「社内で部門の組織開発をしていたからこそ、ファシリテーターが伴走することの威力は分かっていました。ただ、それを各部門から来た一人ひとりの参加者に、研修のなかでここまで併走してもらえたのは、本当に大きい。職場実践レポートを出すだけなのとは違い、参加者も現場も本当に変わるのが分かるよね。」

帝人グルー プは 「発展戦略」と 「構造改革」 の同時実行という非常に大きなチャレンジを続けており、 その中核となる部長が、 組織活性化の牽引者となっていくことを狙いに、組織活性化道場を行いました。
本インタビュ ーは、 プロジェクトのオーナーであった藤本部長と久保田様に背景や導入のご感想をお伺いしたものです。

一御社の業務や概要などについて教えてください

藤本様:

帝人グループは、1918年に日本初のレーヨンメーカーとして発足して以来、化学技術や最先端の研究開発を通じて、「高機能素材」「ヘルスケア」「IT」という3つの異なる領域においてグローバルに事業展開しています。
現在、「ソリューション提供型事業体」へと進化しようとしており、大きな変革期を迎えています。‘‘One Teijin”のスローガンのもと、組織間の壁を打ち壊し、帝人グループ全体の成長に向けての連携を強化し、各部門においては「発展戦略」と「構造改革」の同時実行という非常に大きなチャレンジを続けています。

部長を変革のファシリテーターとして、各現場の組織開発を行う

一部長層に「組織活性化道場」を行う背景について教えて下さい

藤本様:

先に申し上げた「発展戦略」と「構造改革」の同時実行を行うには、部長のリーダーシップは欠かせません。部長のパフォーマンスは、その組織の成否を大きく左右するので、部長向けの研修は非常に重要視していました。

一方で、昔に比べて、管理職がプレイング・マネージャーとしてどんどん忙しくなっています。部長になると、課長と比べてプレイヤ一部分が減って、マネージャーとしての仕事が増えてきますが、中にはマネージャーとしての経験を十分に積む前に部長になる人や、課長の気持ちのまま部長になってしまう人もいます。そういった意味で、部長が組織を変える原動力となれるリーダーシップを発揮することは大きな課題でした。

また、もう一つの背景として、2012年の10月に10年間やってきた事業持株会社制を改めて、一つの会社にまとまって、‘‘OneTeijin”というスローガンを打出しました。このタイミングで、現場の部門は、「発展戦略」と「構造改革」の同時実行を行う必要があり、孤軍奮闘しなければならない部長もいる中で、各現場だけでは実行困難な組織開発を我々人事部が支援する形を徐々に取るようになってきました。

その過程で、今の時代にマッチした組織開発を提供されているToBeingsさんに出会い、最初は1つの部署を対象に組織開発のプロジェクトをやろうかと思ってたんです。ただ、それだと大掛かりになりがちだったのと、全社にやるにはかなりの費用がかかると悩んでいた時に、「部長を変革のファシリテーターとして、組織開発を行う」という提案をうけ、その2 つの課題を同時解決すべく、これまでの2日間の部長研修を、半年弱の「組織活性化道場」というように部長の現場変革活動に伴走して頂く形に変えてスタートさせました。

-「組織活性化道場」の狙いや概要を教えて下さい。

藤本様:
ちょうどToBeingsさんとお会いした時に、MITのダニエル・キム教授の組織の成功循環モデル* の話を伺っていました。このモデルは私たちの世代や昔の日本では当たリ前のように重視された好循環のサイクルかもしれないけど、 今の状況ではなかなか回すことが出来ていない。 ただ、 これを部長が意識して回せるようになるだけで、 組織は大きく変わると思っていました。
そうすることで、 部長が組織をきちっと回していく上で、 課長やその部下達の仕事を通じての成長と共に個性や強みを理解して、 仕事を任せたり、 組織全体の雰囲気作りをしていけるようにするという狙いがありました。

*ダニエル・キム教授が提唱した、うまくいく組織の好循環を表したモデル。組織がうまくいく時は、「関係の質」⇒「思考の質」⇒ 「行動の質」⇒「結果の質」の順で好循環が生まれるとし、具体的にはお互いに関心があり、腹を割って本音で話せる関係性があると、思考の質として前向きな思考・助け合う思考・多様な視点からの意思決定力が上がり、結果として行動・結果も変わるというもの。キム教授は直接は言及していないが、弊社では、その“逆周り’’で無理やり変えようとする変革が経営のいたるところで行われ、機能不全や信頼の低下が起こっていることを指摘し、成功循環を通して社会関係資本を積み重ね、自ら変わる組織開発を実践している。

対象としては、 比較的若めの部長を対象に、 研修と現場実践で、 自部門の「組織活性化」を目指すアクション ・ ラーニング型のプログラムです。 アクション ・ ラーニングと言っても、 現状分析やアクションのレポートを出させたり、職場の課題のケースをディスカッションさせるような表面的な内容ではなく、 実際に職場の部下やチームに働きかけ、その活動を逐ー講師の方に共有 ・ 相談しながら伴走してもらうという仕掛けです。
研修は3回に分けて実施し、 まず研修の場では組織活性化を行う上で必要なインプットやその動機付けを講師が行います。 そして、 研修と研修の間での職場実践は、 受講生が組織の課題と解決策のプラン及び講師からの支援が欲しい領域を設定し、 その活動に講師が継続的に伴走することで、 実践の壁を乗リ越えていこうといった設計です。
受講生が取り組む課題は、 部内の苦手な個人にとことん向き合うようなものもあれば、 部下である課長がもう一歩飛躍するための仕事の任せ方に取り組む場合もありますし、 構造改革の中で個人商店化し機能不全に陥っている組織の風士改革に取リ組む場合、 研究開発において新しい視点や事業が生まれるための仕組みやプロセス作りに取リ組む場合など多岐に渡リます。

そして、もう一つの狙いとしては、孤軍奮闘する部長が、他の部長の悩みや活動を知り、勇気づけられたリヒントを得ること、そして自然な形で部を超えた連携が自然な形起こることも狙っていました。

部長がこれほどこのプログラムに乗ってくるというのは驚き

ープログラムがスタ ー トしての率直な感想は?


久保田様:
私は、 部長陣がこれほどまでにこの研修を積極的に受けてくれるとは、 正直そこまで思ってなかったです。 当初、 事前課題を出してもらったときも、 「組織の課題」を問う内容でしたが、 書かれていたのは自分の組織そのもののことよりも、 会社全体や事業戦略への問題意識が中心でした。従って、 「自分の職場の人間関係や職場風土を考えることについては、それほど優先順地が高くないんだろうな」と思ったんです。 ところが、 実際に研修が動き始めたら、 皆さんどんどん思いが出てきて、 オ ー プンに悩みや課題を
シェアして頂いで熱がこもっていきました。本当によかったです。
苦手な部下とのコミュニケーションをテーマに、 即興役者 の方がその苦手な部下そっくリになりきってくれ、 ロ ールプレイを行ったシーンが印象に残っています。 ある参加者は、 普段割とクールなイメ ージだったんですが、 部下との 関わり方ですこく悩んでいることが初めてわかり、 その他 の方々もここまで部下のことを考えたり悩んだりしている のかと初めて知りました。


即興役者が苦手な部下になりきるロールプレイ

部下(即興役者)の本音を聞いてうなだれる参加者

部長の方々も、 「そういった悩みをシェアしたり、何より他の方のやり方をみたり、 自分のやり方についてフィ ー ドバックを貰うと言う機会は勿論無かったので、 かなり学びなった」と言っていました。 また、 そういった活動を通じて、皆が本気になるスイッチを押されたようです。
私自身は割と今まで若手の教育が多かったため、若手社員が職場でどういうコミュニケーションしているか、 上司にどう働きかけるのかといった、若手社員の立場から人材育成を考える機会が多かったです。その立場からは、部長はずっと上にいて、 なかなか話しかけられない存在という、 いわば部下側の視点で見ていました。
ところが、 今回部長研修に関わって、 当たり前ですが部長も深く悩んでいることやその愛情が伝わリ、 講師の方がアドバイスしてくれたようにそういう思いをシェアすると、 随分と関係性も変わるだろうなということを確信しました。

藤本様:
普通の組織は上から部長・課長・担当者と階層構造になっていますよね)そこで、 多くの部長は、 課長にメンバーのマネジメントを任せたほうがいいと思っていますし、 あるべき姿はそうでしょう。 ところが、 現実は事業や人の状況によって変わるし、課長のレベルによっても変わる。

すると時には課長が言い難いことを部長が代わりに言ってあげるとか、 課長には言い難い批判を部長が受け止めるとか、 要は基本スタンスは任せるんだけど、 部長が一人ひとりをしっかり見ていて、 ここは課長に任せてそっとしようとか、 これは自分が支援しようかと判断し、 実際に支援に出る時には干渉と思われないように事前に課長との信頼関係や協働関係を結ぶとか、常に組織全体及び一人ひとりを見て臨機応変に対応することが必要です。
そういった変北が起きれば大成功だと思っていましたが、 実際には初回の研修が終わった後から、 少しずつそういう事を意識した動きが出始めていて、 そこが非常に良かったと思います。

一人ひとりへの伴走を通して、 現場が変わった

ー現場や受講生からの率直な感想は?

藤本様:
ある参加者は、数年前の着任時から「組織の雰囲気がよくない」と感じて、相当な苦労をしていました。彼に組織活性化道場の感想を聞いたところ、「どうにかしたいけど、一人で悶々としていたので、その課題を自ら考えたり、相談

したりできたので、自分にとって必要なタイミングでした」と言われました。「反省すべき点も見えたのと同時に、今まで組織の雰囲気を良くするために、一人ひとりに向きあってきたことが、間違いではなかったという自信を持てた。」とも言っていました。

職場のコミュニケーションの質を上げるというのは、言うは易しで、みんな変えたいとは思っているけど、なかなかうまくいかないんですよね。そういう時に講師の方が研修だけじゃなくて、その後の日常でも伴走してくれたので、「課長にはこういう言い方をしたほうが良いのでは?逆に新入社員にはこういう言い方をすると伝わるのでは?」とそのレベルで具体的にアドバイスをくれたりしたのが動くきっかけになったのだと。そういうちょっとした言い方がなかなか出てこないけど、そこが変化を生むポイントだからこそ、伴走してもらうことの価値がありますよね。

組織開発にしろ今回の道場にしろ、実際に職場の変化を起こそうと思ったら、現場の人達は自分で考えつくレベル・日常で出来るレベルはやっている場合が多い。だらこそ、人事として現場に出向いて、現場が変わる、自分たちでは出来ない最後のひと押しを手伝ったリ、ファシリテートすることがとてもインパクトがある。

社内で部門の組織開発をしていたからこそ、ファシリテーターが伴走することの威力は分かっていました。ただ、それを各部門から来た一人ひとりの参加者に、研修のなかでここまで併走してもらえたのは、本当に大きい。職場実践レポートを出すだけなのとは違い、参加者も現場も本当に変わるのが分かるよね。

久保田様:
別の参加者は、先ほどの即興役者さんとのロールプレイで、他の部長の部下への関わり方を見て、大変剌激を受けたし、そのやり方を取り込もうと頑張っていると言っていました。今まで、自分一人で悩んでいたなかで、他の方のやり方をみて学ぶところは大きかったのでしょうね。同時に、その他の方々が、今に至るまでに乗リ越えてきた物語を、ストーリーテリングでシェアして頂いたことも、非常に刺激になったという話が多く出ていました。単に講師の方や、教科書的なやリ方から学ぶのではなく、お互いから自然に学び合うという場を作っていただいたのも良かったと思います。

この研修がきっかけになり他の人事施策にも良い影響が

一人事部門のミッションから考えた時、 どのようなインパクトがありましたか?

久保田様:
研修で扱ったダニエル ・ キム教授の成功循環モデルの考え方は、 部長1人が持っていれば良いというものではなく、 社員全員に知ってもらった方が効果的だと感じています。 そういう意味で影響力のある部長から、 それを組織に浸透させていくというのは、 全社としてそういう考え方を浸透していくことに繋がります。 また、 私が担当する新入社員研修のときにも、 この成功循環モデルの話を取り上げるようにしました。 「関係の質」の大切さを、 上司も知っているし部下も知っている状態にしていきたいと思います。
また、 ケースではなく、 常に生のケースであったことも大きいです。 研修の中でも、 ケースではなく参加者の様々なリアルな状況や悩みを素材に対策を考えることが役立ちました。 また、 研修後に参加者に伴走し、 全員と何度か個別面談してくださった結果を元に、今、 組織で何が起こっていて、 何が本当のボトルネックなのかを、 ToBeingsさんが整理・解説をしてくれました。 これが、人事として、今後現場を支援する戦略を考える上での貴重な情報になリました。

藤本様:
常々、 部長の役目は3つあると考えています。 うまくいっている組織では、 働いているみんなが一つの非常に大きな方向のベクトルに向かっている状態があります。 だから、 部長がその大きなベクトルの方向を指し示すことが最低限必要な役目です。 そして、方向を示すだけではなく、方向に進めるように部下の働きやすい環境を作ることも役目です。そして最後の一つは、 自分が部長として、 「これだけは絶対曲げられない」「部下を使ってでも必ず成し遂げたい」という気持ちを見せてやること。 そうすると部下はついてきてくれます。
今回のような道場での試行錯誤を通じて、 部長一人ひとりが、 自らの軸を定めることができ、 結果として組織のベク トルを合わせていくことが出来ると思っています。 今回のように部長が自らやるべきだと思ったことを、 周囲を巻き込んで一緒にやることで、 組織のコミュニケーションの質を上げる大きなチャンスになると感じています。

様々な声が挙がるファシリテートと協働型のパートナーシップ

ープロジェクトを実施してみて、 ToBeingsの特徴や違いは何だと思いますか?

藤本様:
以前から、研修だけやって終わりの講師ではなく、 実際の コンサルや組織開発まで出来る人に講師を任せたいと思っ ていました。そうした折、 ToBeingsさんのアプロ ーチを聞 いて、 うちにピッタリだと思いました。
さらに、昔の組織開発の昔のイメ ージは、権威的な人がファシリテ ー トして、 強制的に自己開示していくような面があって、 どこか違和感がありました。 ところが、 ToBeings さんが紹介されたダニエル ・ キムの成功循環モデルだけではなく、 その他のアプロ ーチも、 今の時代にマッチしてすごく心に入って来たんですね。 新しい時代、 新しい世代の 組織開発と言う感じで。

久保田様:
確かに、研修では車座になって話すシーンが何度もありま したが、 そこでの安心感と、 強制感の無さは非常に印象に残っています。 そういう場は、 得てして自己開示を強制される感があったり、 その講師が求める状態を強要されるような空気感がありますが、 そうした嫌な感じが一切なく、 驚きました。

それはなぜかを考えてみたところ、研修を受けている人が、 前向きな姿勢でももちろんOKだし、 ちょっと後ろ向きな姿勢だったり、 不安があったリしても、 「そういう状態でもいいんだよ」という雰囲気や空気感を出してくれているからでしょうね。 こうした受講生の気持ちや状態を否定せず、どんな否定的な声も歓迎して、 その声を一緒に考えて いくところが、 とても特徴的でした。

藤本様:
それから、 打ち合わせを進めるにつれて、 顧客志向の強さは非常に感じました。 それは研修を作るという発想ではなく、 うちの現場を変えることを徹底的に考えているし、 そこから考えてデザインしている。

さらに、 研修会社さんによっては、 カスタマイズしますと言っても、 作られた研修プログラムを当て込んでいくスタンスのところがほとんどだけど、ToBeings さんとは、 打ち合わせを重ねるにつれて、 顧客の状況を丁寧に聞いて、プログラムを新たに一緒に作り上げていくスタンスが印象的でした。 最近はこういう会社がいなくなっていたので、とても良かったです。


ー最後に、 ToBeingsへのメッセージをお願いします

藤本様:
うちのことを深く知って、最適なものを提案するということをこれだけやってくれるのであれば、ToBeings の新しいサービスや新しいやり方を、どんどんうちで試してもらったらいいんですよ。「他社で成功した事例をうちでもやってほしい」と言うつもりは絶対になくて、うちに合うやリ方で新しいことを提案してもらい、「ぜひ思い切ってやりましょう」と言いたいです。

もちろん、他社で成功した事例を排除する必要はないですが、それだけでは絶対に面白いプロジェクトにはなりません。むしろToBeingsという会社がこれからどのように社会に価値を提供していくのか、その変化を一緒につくっていく感じになれればいいよね。ToBeingsの今後の可能性に期待しています。