「今年の次世代リーダー養成研修、一体どんな研修しているんですか?」ー東京海上日動火災保険株式会社

「研修を受講していない現場の社員から、今年の次世代リーダー養成研修が 社内で評判になっているという声を沢山いただきました。 一つの研修がこれだけ噂になったのは、それだけ受講者が職場を 活性化する取り組みを現場で実践してくれたからだと思います。」

「次世代リーダー育成」を通して取り組んだ「組織活性化」プロジェクト

東京海上日動企業営業部門が実施した 2010 年度「コマー シャルリーダー養成塾(以下 CL 塾)」は、組織の活性化を実 現する次世代リーダーを育成する実践型プロジェクト で あり、育成期間が終了した今も、メンバー一人ひとりが誰に 言われるでもなく、自分の職場で組織活性化の取り組みを 継続している。 自ら行動を起こし、職場メンバーを巻き込み変えていく リーダーを生みだした「CL 塾」の取り組みについて、東京海 上日動企業営業開発部企画 G の魚返課長(写真左)と栗澤様

「次世代リーダー育成プログラム」の概要

-1.CL塾とはどんな位置づけの研修なのですか?

弊社における企業営業部門は、東京海上日動の 3 つのカンパニーの内の 1 つ で、大企業をお客様としています。

CL 塾は、コマーシャルカンパニーを中心に、東京海上日動の将来のリーダー を展望する課長代理クラスを集め、半年間をかけて行う実践的リーダーシッ プ開発プログラムです。

2010 年度の CL 塾は、彼らに「組織力の最大化」をゴールとして掲げ、組織活性 化の標準的な進め方やスキルを提供し、半年間をかけ、アクションラーニング 形式で自分の職場を活性化していくというプログラムでした。

今年の研修を終えての率直な感想はいかがでしたか?

研修の良さは当然ですが、今年はそれ以上に、研修の最終日には、多くの者が 「これからがスタートだ」という意識を持ち、現場で職場活性化の活動を続け、組織開発をもっと学ぼうとなんと大学院に進学する者まで出たことには驚きました。

また、研修を受講していない現場の社員から、「今年の次世代リーダー養成研 修、職場でも評判ですよ。一体どんな研修しているんですか?」という声を沢山いただきました。1 つの研修が、これだけ噂になるのは、それだけ受講者が職場を活性化する取り組みを現場で実践してくれたからだと思います。

次世代リーダー育成のテーマが、なぜ「組織力の最大化」だったのか

-CL 塾を重視する上で、なぜ「組織力の最大化」をテーマにしたのですか?

次世代リーダーは、「論理的思考力」や「経営戦略のフレーム」、「コーチング スキル」など、身につけるべきスキルが多岐にわたるため、育成の軸をどこに置くかを慎重に選択しなければなりません。

今回 CL 塾を企画する上では、「組織を牽引するリーダーにとって最も大事なことは何か」ということを深く考えました。

その中で出てきたのが、上司や職場メンバーを巻き込み、働きやすい職場作りや、組織のビジョンを作るようなコーディネートをすること。言い換えると、自ら考え行動を起こし、「組織力を最大化する」ということでした。

-CL 塾を通して、どんな経験をさせたかったのでしょうか?

もちろんリーダーシップやスキルも重要ですが、この取り組みを通して、「自分が動けば会社が変わるんだ」と「会社を小さく」感じられる経験をしておくことは、彼らにとって今後のキャリアに直結する貴重な機会になると思いました。
また受講者が、若手や女性社員も含めて「心の体温」を上げることで、仕事を 「意気に感じる」関係性を作れるようになることも、とても大事なことだという個人的な想いがありました。
そういった考えを具現化してくれるパートナーを探していたところ ToBeings さんと出会い、橋本さんや深見さん達に一緒に考えてもらいながら、半年に及ぶ CL 塾を設計していきました。

受講生が「自らの職場活性化を次々に実践し始めた理由」は

-今回、受講生が「自らの職場活性化を次々に実践し始めた理由」は?

やはり、受講生を「大人扱いした」ことに尽きるのではないでしょうか。企画側としては、最初に明確に課題を設定させたり、その課題について定期的 にレポートを出させて進捗を報告させたり、というやり方の方が進めていきやすい。

しかし、そのやり方だとうまく報告書を作文してくるけれど、肝心の「自らゴールを設定する」とか、「外部からの強制力が無くても、自らの信念で会社を動かす」ことの経験が積めません。彼らは十分に経験を積んだ社員なので、自分から面白いとか必要だと思い、同時に自分でもできると感じるきっかけさえあれば、自ら動くと思うんです。

-例えば、どのように大人扱いをしたのでしょうか?

第 1 回の研修が終わったあと、皆がすぐに職場で実践したというわけではありませ んでした。恐らく、今までやったことの無い取り組みなので、勘所が分からなかったり、忙しさもあったのでしょう。
そんな状況でも、無理やりやらせるのではなく、2 時間程の電話会議を期間中に定 期的に実施し、取り組みの状況や、うまくいったこと、失敗したこと、もしくはどんなところで止まっているかなど、生の声を共有しました。

そうすると、先行した受講生の活動が刺激になったり、ヒントになったりして、次々と実践する人たちが現れてきました。一見、自然に起こったように見えますが、そういう 絶妙な場作りやファシリテーションが ToBeings さんのノウハウなんだと思いましたね。

-その結果、受講生が型にはまらず、独自のやり方で実践が始まりましたね

「そうですね。職場によっても、受講生のキャラクターによってもやり方は違うだろうから、是非いろいろアレ ンジして、それを共有して」とも伝えていたので、だんだんと自分のやり方で実践するようになってきました。
例えば、一人ひとりの強みを調査で診断するストレングスファインダーを、診断ではなく動物占いのように女 性社員に紹介して流行らせた人も出てきたし、互いの成功体験から強みや価値観を探求するハイポイントイ ンタビューを、雰囲気を変え、飲み会で実践する人も出てきました。
また、職場のメンバーを巻き込んで組織活性化を推し進めるコアチームを作りましょうと言ったら、コアチー ムの代わりに「秘密結社」を作りましたという人が出てきたのはさすがに想定外でした(笑)

ープログラム期間中に受講生が起こした成果例ー

神戸・広島・福岡などの広域にまたがる課を超えた集まりで、「私たちが本当に作り上げたい職場 は?」というテーマで対話会(ワールドカフェ)を実施。普段は、関心を持たない一般職も、「café バリ スタ」と自分たちを称し、心温まるホストを行い、組織活性化に向けた大きな反響があった。
仕事以外の交流が無かった課・部で、自分の強みや過去の業務経験での想いなどを対話し共有した ことがきっかけで、互いを知り合うことの重要性が共有される。その後、フットサルチーム、自主勉 強会、部の未来を語る会などが次々に生まれ、活性化の後継者を作る取り組みも始まる。

さらに、受講生のアイデアが集まり、アウトプットも生まれましたね。

そうですね。電話会議で、職場活性化しようにも「職場によって事情も違い、活性化の度合いが分かりにくい」という声が多くあげられたので、メンバー全員で独自に活性化のフェーズ分けシートをつくりました。
そうすることで、自分の立ち位置やフェーズを進める鍵やツー ルを整理でき、取り組みやモチベーションをさらに加速させました。職場の活性度合いを測るアンケートも、皆で作成しましたね。
そうやって、電話会議にしろツール作成にしろ、ToBeingsさんに臨機応変に対応してもらったのはとても助かりました。
最終的には、そういったツールや皆の体験談が、現在作成中の 「組織活性化のためのヒント集」に集約され、弊社にとって大事なノウハウが集まりました。

●組織活性化フェーズに従い、一人ひとりの状況や変化を実感 部屋全体を「職場の活性化フェーズ」を現した地図に見たてて対話するコンステレーションワーク。 半年間でどのような変化が起こったのかを実際に身体を使って体感し、同じ状況にいるメンバーと対話。

CL塾終了後にメンバーに起こった変化

-CL 塾終了後にも、受講生に様々な変化がありましたね

第3期生終了後には、私たち企画側の想像をはるかに超えて大きな 変化が起こりました。全受講者のうち8割近くの方は、このプロ ジェクトを継続させ 4 期に繋げる自主活動に、立候補しています。

「自分がまた戻ってきたいと思える課にしたい」という思いで、現在 の職場の活性化に取り組み続けるメンバーも出てきました。熱い思 いを持ち、その思いを職場の同僚に伝えて、変革を実践できるこ とって本当に凄いですよね。

他にも、組織活性化をより深く学びたいと、仕事を続けながら組織 開発を学ぶ大学院に進学する受講生も出てきました。

最近も、各メンバーが独自に取り組みを進めていますよね?

来週(本インタビューは 2 月 17 日実施)も、東京近郊のメンバー が集まり、来年度の4期生のプロジェクトを効果的に進めていく ためにはどうすべきか、そして自分たち自身がどのようにこの活 動を継続していくかを話し合う機会もあります。

また、CL 塾の取組みを代理店さんに話をしたところ大変共感を いただき、代理店さんから直接、「何か組織活性化のような取り組 みが出来ないか?」と依頼され、話を進めている者もいます。

このような取組みが生まれるのは、受講生がこれまでの研修での 経験を通して手ごたえを感じ、組織の変革に興味を持ち始めたか らでしょうし、「実践の場こそが今回の研修の一番の道場だ」とい う意識の表れでもあると思います。

この取り組みを初めて、受講生のいる現場からはどんな反応がありましたか?

参加した CL 塾メンバーが、今回の研修について、これまでのどの 研修よりも学びがあったと言ってくれているみたいなんですよね。 そのため、「私もこの研修受けたいんです」っていう声が、職場から も他の部門の社員からもあるんですよ。 対象が決まっているので中々門戸が開けないんですが(笑)

-最後に、ToBeings へのメッセージをお願いします。

私の考えとして、今回のような組織全体に影響を与えるような プロジェクトでは、組織変革や人材育成を生業としている方た ちに全てお任せしてしまうのではなく、我々と共に課題を共有 してその打ち手を考えていく、ビジネスパートナーであって頂 きたいと考えています。

我々自身は自社の文化や置かれている状況を把握しているので、そういった意味では自社のプロです。一方、ToBeings さんは 組織開発の豊富な経験を持つプロですので、お互いが意見をぶ つけ合い東京海上日動流に組織開発をアレンジしていくことが 今回のプロジェクトではとても重要で、それをしっかりと連携 して頂けたことに感謝しております。

特に、プロジェクトの設計段階では、表面的なことだけでなく、 深いレベルでゴールを共有できた感じがありましたし、プロ ジェクト中も何度も打ち合わせをし、当初の予定よりも全体で の電話会議を増やすなど臨機応変に対応いただいたりと、 ToBeings の橋本さんや深見さんが当社の社員であるかのように も感じました。それぐらい強いパートナー関係が築けたと思っ ています。

今年度も新しく第 4 期 CL 塾が始まりますので、3 期生を越える ものを一緒に作っていけることを期待しております。