1on1の次の施策として、ヤフーの社内に組織開発を普及させる一歩となりました。

池田さま

「1on1」をはじめ、個人の「才能と情熱を解き放つ」キャリア開発や人 材開発で、多くの注目される変革を実践してきたヤフー株式会社。昨今は、 組織開発の領域でも、先進的な活動が多く見られますが、その現状や、 ToBeings と共に取り組んでいるプロジェクトについて、その背景や成果 をお伺いしました。

ピープル・デベロップメント統括本部 人材開発本部 組織・人財開発部
部長 池田 潤 様 、担当 塚田 理 様 、小金 蔵人 様

̶本プロジェクトの背景となる御社の現状を教えてください

池田:
ヤフーでは、2012 年に宮坂が社長に就任し新体制に移行しました。それに伴い、弊社の執行役員の本間のもと、一人 ひとりの「才能と情熱を解き放つ」ことを目指した環境作りに着手してまいりました。経験学習モデルをベースとし、 上司と部下が週に 1 回 30 分の対話の時間を設ける「1on1」の取り組みが全社で普及するなど、この 4 年間で一定の 成果を得ることができたと感じています。

一方で、個人への関わりだけでは解決できない組織開発上の課題を、私たちのチームで対応していたのですが、その 限られたリソースではカバレッジに限界がありました。そこで、ToBeings さんと情報交換させて頂く過程で、最終的 に「1 対 N」の形でチームに関わる「組織開発」のスキルは、弊社の「1on1」と同様にマネージャーに必須のスキル であると定義し、マネージャーや部門人事などを通して全社に普及させていく必要があるのではないかと結論づけま した。

本プロジェクトの内容を教えてください

池田: まずは、マネージャーや部門人事に必要な「組織開発」 のスキルとは何かを定義することに相当な時間をかけ ました。組織開発の分野は相当に専門性が高く、また 理解に時間がかかるので、その中でマネージャーや部 門人事に必須のエッセンスが何かを括りだすことはかなり大変な作業でした。

また、社内に誰にどう普及させるかも、ゼロベースで 考えました。マネージャーからが良いのか、部門人事 からが良いのか等のオプションも様々に検討しましたし、どれくらい自己組織化や自己選択を重視していくかも考えました。いずれにしろ、ヤフー社内で普及す るためには「バズる」だけの質や仕掛けが必要で、様々なやり方を試行錯誤を通して ToBeings さんと検討してきました。

最終的には、ヤフーの文化や強みを生かすべく、2 つの流れを確立しました。1 つは、1on1 と同様にマネー ジャーに組織開発のマインドと自組織で回せるレベル のスキルを普及させていく流れで、ヤフーの本部長・ 部長クラスを対象に、実践フォローを間に挟む 2 回の「組織開発型マネジメント研修」プログラムとして導入することにし、ToBeings さんに開発とデリバリーをお願いしました。本部長・部長が総勢 400 名程度いる中、現在 125 名ほど受講を終え、管理職 1000 名への普及を目指して徐々に拡大中です。その次は管理職以外の層も展望しています。

塚田様

塚田:
もう 1 つは、部門人事に対して組織開発の目線やプロトコルを合わせていくための「パートナー型組織開発プログラム」 です。こちらは、現場の組織開発に関わりうるポジションにいる部門人事など向けに 4 回の実践型講座を提供し、南 山大学の中村先生に理論的な全体像をお願いし、ToBeings さんには 2 回に渡りパートナー型組織開発のマインド・ス キルをご紹介頂き、最後に私たちがヤフー内部の実践例から学ぶ講座を提供する形にし、これも徐々に広げております。

そこに収まらないような、複雑で難易度が高い組織開発については、当チームで対応し、こちらも一部 ToBeings さん に支援を頂きながら、進めているという形です。

プログラムを実施した感想は?

池田: 管理職への組織開発の普及ということに関しては、このプログラムの前から「関係の質」を上げようという大枠 のメッセージは全社的に伝えてはいましたが、このプロ グラムで実際の管理職の方々に組織課題を挙げて頂いた り、それを組織開発のレンズで紐解いたりして頂いたと ころ、管理職の方々はとても高い課題感や関心を示して 頂き、そういった前向きな興味を持っていることが分かっ たこと自体が、大きな成果だと思いました。

管理職のそのような関心の背景には、単に組織がどんど ん拡大しているだけではなく、ダイバーシティーも上がっ ていて、それも海外からの新入社員というような分かり やすい属性の話しだけではなく、週休 3 日なども含め就 業形態や価値観の違いが良い意味で大きくなっている。 そのなかで、組織としての求心力を再構築したり、一人 ひとりの強み同士の摩擦や化学反応を起こしてイノベー ションをしたいという必要性が強くあるのだと思います。

塚田: 印象に残っているシーンはいくつもあります。例えばある本部長は、普段の仕事は、どちらかと言うと目に見えるものや短期的なスピードが大事な、組織開発とは程遠 い仕事をしている人なのですが、終わった後に「組織開発にハマった」と言って自分で本をどっさり買ったり、 部下にも学ばせたりと一気に変わりました。元々非常に 優秀で成果を上げてこられている方なので、どこかで気づいていた違和感や問題意識を解決できるという直感を 得たのだと思います。他にも非常に優秀な本部長・部長が、これだけ反応が良かったのは、やはり大きなことだと思いました。

小金様

小金: 私はこの部署に異動してすぐだったのですが、割とこういうことに懐疑的だった優秀な本部長・部長が、あれをきっかけに、やっぱりこういうことが大事なのだと気づきを得ていたのが印象的で、そういう意味で、持ち帰ってもらったものがすごく多かったと思います。

ToBeings をパートナーとして選んでいる理由は?

池田:
たくさんあり過ぎて語り尽くせませんが(笑)、敢えて 1 つにしますと、私たちの言い方で言うとまさに「プロセス・コンサルテーション」をしていただいていて、私たちのプロセスに圧倒的にコミットして下さっているところが、最も信頼させて頂いている点です。

組織開発にはいろんなスタイルや流派がありますが、そのバリエーションも沢山お持ちですし、一方でそれぞれの流 派から等距離を取り、何よりも私たちの状況を丁寧に理解し、それに合わせながら、今必要な打ち手を様々な引き出しの中から処方をして下さる感じですね。似合わない服を無理やり着させることは、決してしないという感じが、心から信頼できる点です

塚田: 具体的な例で言うと、今回のプロジェクトの企画段階において 各社様にヤフーの文脈をかなりお話させて頂きました。例えば、 経験学習などの重視するコンセプト、1on1 などの文化や普及 経緯、「才能と情熱を解き放つ」上司の役割、人材開発会議な どの制度など、多岐に渡ります。それらを全て踏まえて、今回 の取り組みコンセプトに昇華させた1枚のスライドを見た時、 ToBeings さんと一緒にやることを確信しました。こだわりがあるからこそでしょうが、自分たちのアプローチの押し売り感がある他の組織開発の会社様とはその点が全く違いました。

今のが企画段階だとすると、当日も特徴があります。当日は、 一応研修という形はとっていますが、皆さんが持ってきてくれ る組織課題は “生もの” ですし、毎回集まったメンバーによっ て雰囲気も課題も全くバラバラで違う。その “生もの” に合わ せて雰囲気を作り、持ち込んできた課題に対して提供する視点やコメントの提供をして頂き、「あ、そういうこともあるよね」 とか、「そうか、それ納得だな」というあの目、あの顔つき、 あの雰囲気は、毎回驚きますよね。

そして、事後に作って頂いた弊社の組織課題の見立てと介入のケース集ですね。元々は、このプログラムを弊社で内 製化するために、弊社でよくある組織課題のケース集を作って頂くことをご提案頂いていました。一方で、私たちも インハウスで、様々な部署に対する組織開発を月に何本もやっているので、ある程度ケースを掴めれば自分たちで出 来ると思っていた自負がありました。ところが蓋を明けてみると、氷山の下にある複雑な課題を見立てる視点や、個 人の深い所にある心理との絡みの視点などを聴いていると、自分たちには無い視点が沢山あり、急いで内製化せずに 当分はその視点を一緒に学べればと方向転換をしたくらいでした。

小金: それから、組織開発を数時間に凝縮するとか、システム 思考で組織課題を見立てるとか、そもそもかなり難易度 が高いことをやっているのですが、橋本さんの雰囲気も あるとは思うのですが、フランクで親しみやすい感じに して頂きました。「あれ、忘れちゃった」などと言った自 己開示をされることで、場全体に安心・安全を創っていて、 それが参加者にも伝わっている感じがありました。一方 で山内さんがそれをクールにサポートする感じとか、そういうコンビネーション自体から学ばせて頂いた感じが ありました。

̶最後に、ToBeings への今後への期待をお願いします

池田: われわれの組織開発のテーマもどんどん変わっていくので、それに応じてのプロセス・コンサルテーションを引き続 き期待していますし、大きな世の中の動きなどは引き続き教えていただきたく思っています。あとは何より長らくよ ろしくお願いします。飽きずに付き合って下さい(笑)。

塚田:
ヤフーは 2016 年 10 月から新しいバリューに変わりましたが、既にそれらのバリューにも、組織開発的な意味が含ま れており、All Yahoo Japan など主語が We になったり、個人間の相互作用に目が向けられたりと、全社的にそういう 流れになってきています。従って、これまで以上に壁打ち役をお願いしたり、組織開発の案件をお願いするときのよ うに、ゴールのイメージだけ共有して、あとは全てフリーで一緒に考えたりといった関わりを引き続きお願いしたい と思っています。