【第2期参加】修了後に気づいた「組織の縮図」。日々の業務にすぐ活用できる実践知を得た

昨年9月より4ヶ月間にわたって開催された「今ここから始まる組織進化の実践講座」。合宿形式による入門講座、さらにオンライン形式で学ぶ本講座を通じて得た学びの変遷について、お話を伺いました。

わらべや日洋食品株式会社

執行役員 チルド商品部 部長

喜屋武 貞史

初めて触れた「組織開発」。今までと違うプロセスに惹かれた

──普段はどのようなお仕事をされているのですか?

仕事としては、チルド商品部の部長として責任者をしています。弊社の取引先であるセブンイレブンさんに向けたサンドイッチやデザートなどの提案をしていく仕事の責任者です。自分の開発した商品が店頭に並ぶので、この仕事は達成感が分かりやすいんです。

一方で商品として売り出されるまでのプロセスは険しくもあり、厳しさを感じることもあります。そうした厳しさを組織としてどう受け止めていくかに課題を感じており、なんとかしたいと思っていました。

──当講座を受けようと思ったきっかけは?

実は以前、他のコンサルティング会社に頼んで、マーケティング力をつけるためのワークショップを開催してもらったんです。参加したその瞬間はいいのですが、その後は現実に引き戻される感が強いので、あっという間に効果が薄れてしまいました。そうした経験を踏まえ、「組織開発」というまだ触れたことのないカテゴリーではありましたが、参加してみようと思ったのがきっかけです。

──「組織開発」に今までとは違う何かを感じたのでしょうか?

そうですね。今までは「ルールを作る、処方を与える」ことで負の部分を取り除く施策が多かったのですが、トレードオフで副作用も多いと感じていました。繰り返されると、作用と副作用が連続するので、疲弊してしまいます。処方ではないところから組織を治すほうがいい。そう思ったので、「今までと違うプロセスってなんだろう?」と興味を惹かれました。

組織開発という存在自体は知っていましたが、私は人事担当ではありませんので、それほど深い興味は持っていなかったんです。それでも「何かありそうだな」と思いました。

「変える側」と「変えられる側」の構図になっている自分達に気づいた

──喜屋武さんは2日間の合宿形式で行われた「入門講座」にのみ参加されています。実際に講座を受けてみて、いかがでしたか?

しっくりくるものがありました。

作用点にだけ近視眼的にフォーカスをしていて「なんとかしよう」と思っていましたが、違うところをいじった方が作用点を変えられる──そういう根本的なところを掘っていけそうな気がしました。新しい制度を作ろうとか、ルールを作ろうという講座ではなかった点が非常に良かったです。

──具体的に「しっくりきた」のはどのような点でしたか?

「変える側」と「変えられる側」のコンフリクトの話が出てきた点です。まさに自分達の組織内にそういうものがあるなと。さらに「縮図」という言葉も、しっくりきました。

部長という立場上、「変える側」と「変えられる側」の図式は非常に強いと感じていましたし、僕自身と上司も同じ関係にありました。例えば、自分の思った答えが来ないと不機嫌な態度をとる上司に「イヤだな」と感じていたとします。しかし同じように、部下から見たら僕自身も、同じように見えているかもしれない。改めて部下に聞いてみると、自分にもそういう行動がなかったとは言い切れないと思ったんです。自分が不機嫌になると、部下も心の機微に気づいて忖度したり、大きく捉えたりすることが多いのだろうなと気づかされました。そこを見直して、自分の行動を洗ってみようという思いに駆られました。

──「自分もそういうことをしていたかも」と受け止められたのですね。そこに怖さや不安はなかったのでしょうか?

気持ち良いものではなかったですが「やったことがないので、やってみた先に何かあるかもしれない」という方が、大きかったです。実は入門講座を受けていた2日間で気づいたというよりも、その後もじんわりと効いてくるような感じでした。

会社に戻って仕事をしている際に、コンフリクトが起きたり、上司に対して僕が「イヤだな」と思ったりした瞬間に「これは縮図だ」という見方をしてみるんです。現象を洗っていくと、「部下も僕に対してそう見ている可能性が高い」と分かってくる。2日間の講座中、自分も組織の歯車の一つになっていそうだと考えながら過ごしていたのが、じんわりと効いてきた背景にあるのかもしれません。

──業務の中で、講座の内容を思い出しながらつなげているのですね。

そうですね。例えば、「今のムッとした感情は、“組織の縮図”かもしれない。自分だけでなく、全体で連鎖している可能性がある」と感じられるようになりました。近視眼的な組織の見方が、一歩引いた視点で見えてくるようになってきています。

これまでに受けてきた講座は、マーケティングのプロセスに関する勉強がほとんど。人事的な上司部下の関係性よりも、「商品開発とは何か?」や「ヒット商品を生み出すためのブルーオーシャン・レッドオーシャン」のような知識重視の講習型研修が中心でした。

もちろん、研修を通じて一定の知識を得ることはできます。個人の能力を高めて、商品開発に活かそうと取り組みましたが、なかなか思うような成果が出せていませんでした。今回は、組織としての働き心地が足りないのではないかという観点から受けたため、研修の質は全く異なっていました。

講座内容に戸惑いつつも、ハードルを設けずどっぷりと入った

──今まで受けてきたような、いわゆる“お勉強系”の講習とは違った講座内容に、戸惑いはありましたか?

はい、戸惑いましたね。頭が疲れました。

ストーリーテリングで場を温めてからワークに臨みましたが、場を温めることがすごく大事だと感じました。組織を良くするためには場の安全性が大事だと思いますが、「こういうことなんじゃないか」と早い段階で感じられて、「これはもしかしたら面白いかも」と集中力を高めながら講座に入れました。そこがある意味、自分の中で腹落ちしたところでした。体感知をくすぐられたような感じでしたので、初対面の参加者同士のワークもやりやすかったです。

──喜屋武さん自身がオープンマインドで、場を受け入れられる在り方をしていますよね。もともとそうした性格だったのでしょうか?

性格的にもそうでしょうし、組織を良くしようとする取り組みについては、「会社でもリーダーになったんだからこれだけはやらないとダメだ」という思いがすごく強かったんだと思います。何も怖いと思いませんでした。

自分のなかでやると決めたことですから、変にハードルを設けずにどっぷり入ってみようと。うまくいかなくても何か失うわけではありませんから、ある意味、開き直りもありました。「やるからにはちゃんとやろう」と、講座前から強く思っていましたね。

──組織を良くしたいとの思いが、大きく影響していたのですね。

そうですね。例えば、働きやすさ改革については社内でも言われていますが、僕は「数字のためにやっている」と思っているんです。民間企業ですから、組織が良くなり、社員が生き生きと働けることで、いい商品が生まれる。そんな流れが「正しい循環」だと思っています。ですから、数字を作るために「組織を良くする、組織を活発にする、安全な組織にする」のは非常に大事だと思います。

ロールプレイを通じて、普段は味わえない立場から物事を見た

──講座内で一番印象に残っているのは、どのような点ですか?

ロールプレイは面白かったので、印象に残っています。僕はいつも組織内では上の立場に立っているので、そうではないロールをしてみて「皆はこんな風に自分を見ているのかな」と感じました。普段は味わえないロールに変わってみる経験は、非常に面白かったです。

さらに参加者の方々は、どちらかというと「変える側」と「変えられる側」をどう仲介するかといったHRBP的な仕事をしている方が多かったんです。しかし僕は「変える側」の立場として参加しているので、その方達とは見る視点が違います。HRBPとしては「何とか話を収めよう」と思っていても、僕は別にそんなことは思っていなかったりするわけです。「HRBPとしてはどう考えているんだろう」と観察できたのは1つの財産・知識として、いい刺激になりました。

──HRBPだけでなく、役員など多様な役割・立場の方が参加されていましたね。

そうした違いが非常に良かったですし、面白い刺激につながりました。ロールプレイで「この役をやってみて良かった」と思ったのが、ほとんど何も発言をしない人の役でした。頭が熱くならずに場にいられて、「こういう役割も大事だな」と分かりましたね。いつもの自分は熱くなりすぎて、物事を近視眼的に見ているのではないかと気付かされました。

「2mmだけ場を動かしてみよう」というワークの際も、僕は発言しない役でした。普段はあまり発言をしない人がひと言呟いて完全に無視されることもあれば、フックに引っかかって皆が聞き入れる瞬間もある──この瞬間に「2mmだけ場を動かしてみる」ということを体感できた気がしました。

自分自身が変わり続けることで、少しずつ活動を広げたい

──普段のお仕事の中で、意識して気をつけるようになったことはありますか?

一番は、「変わらなければいけないのはまず自分自身でなければならない」という意識。これは非常に強いです。「そんなことしなくていいよ」と部下には言いますが、皆「僕の顔色を伺って仕事をしているだろうな」と何となく自分でも感じているんです。変わらないといけないのは自分だと思っています。

だからこそ人の話をよく聞くようにしています。自分の発言が皆の答えになってしまうので、発言し過ぎないようにも気を付けています。

先日オフサイト合宿をして、アンケートを取ったんです。参加者が100名もいますから批判的な意見もありました。でも逆に今は、「そういう意見が出るのは、この場が安全だと思っているからだ」と感じるようになりました。いちいちムッとしていたら変わらなくなる。だからムッとするのではなく、批判的な意見も逆にいいことなのかも知れないと思えるようになってきました。

──講座を終えてみて、ご自身の周りとの関係性・働きやすさなどは変わりましたか?

僕自身は実感していないのですが、「少し部内が明るくなったね」と言われました。一方で、実感としてあるのは「現実に引き戻される力の強さ」です。皆を引っ張り出して変えようと動いてみても、現実に戻る力は非常に強い。そこで行動を起こすこと自体、「周りからどう思われるかな」と気にする気持ちもあります。それは皆、同じ気持ちだと思いますが。
そういう現実に戻される難しさがあるので、ここから少しずつどう動かしていくかが問われています。過去に戻らず正循環になるように、小さな活動をやり続けるのが大事だと思っています。

小さい施策を継続的に打って、少しずつ動かしてみる作戦をしようかなと。今後のプランとして考えているところです。

──これからさらに探求してみたいことはありますか?

そうですね…僕は会社が好きなんです。今は部内だけですが、こうした活動や気持ちが温まっていく感覚を広めたいです。1人でも多くの人に味わってもらいたい気持ちが強いですかね。そうすれば皆がより働きやすく、楽しくなると思っています。

あとは、話がずれるかもしれませんが、ストーリーテリングは個人の今までの話をしていましたよね。会社は法人、つまり「人」のような存在にも感じられます。ですから最近は社史を見返そうかなと思っています。創業者の想いや、社会貢献、お客様のためにどういうことをしないといけなかったのか。さまざまな苦労の歴史があったと思います。それを皆でひっくり返して味わってみれば、共感できる部分があったりするかもしれない。さらに、その会社のストーリーが中心となって、うまくまわるかもしれません。会社の歴史が長くなると、創業者の想いは、役員の中でも薄れてしまうからです。

社員は会社のどこかに共感すれば、きっと残るでしょう。日々の忙しさの中で忘れたり濁ったりするでしょうから、時にはその共感の理由をクリアにすることも大事なはずです。やっぱり弊社は、社員を大事にしていると思うんです。もちろん課題もありますが、トップの想いは、社員に幸せになってもらいたいということ。人を大事にする想いは、どこの会社よりも良いんじゃないかと確実に思っています。そこはぶれていないんです。

組織に対して課題を感じている全ての人に知ってほしい

──当講座はどのような方に向いていると思いますか?

人事かどうかは関係ないかもしれません。数字を背負っている営業など、どんな方が参加してもいいと思いますが、少なくとも課題を感じている方には向いているのではないでしょうか。

例えば、とてつもなくワンマンな人がいたとします。本人に直す気がなければ、周囲には受け入れてもらえないでしょう。「何かを変えなきゃ」という意思を持っている人にとっては、良いきっかけになることはいっぱいあると思います。こうした内容の講座はここ以外にないので、課題を感じている方には非常に良いのではないかなと思います。

「変える側」と言われている当事者であり、「今の状態は良くない」と思っている方は絶対に良いですよ。「変えられる側」の意識が強いと、「結局そうは言ったって、うちの上司は無理だよ」とどこかで思ってしまう気がします。強烈過ぎる上司がいる方が受講しても、その人が物事を変えるのは非常に難しいでしょうからね。「変える側」のポジションにいながら困っている方や、社員の意欲低下を心配している方にはおすすめです。

──インタビューを通じて、喜屋武さん自身の受け止める力の強さを、改めて感じました。

僕は本当に「腹を括っている」というか、やると決めたらやると思っているので。だから、飛び込んだ先に何があるのかとワクワクしている。それだけです。

何かが変わろうとしている片鱗が、「ひょっとしたらあるかも」という感じで、もう少し進まないと光までは見えてこないかも知れないですね。ただ、失敗したといったマイナスな思いはほとんどありません。そう思えるようになって良かったですし、今後どのように組織と向き合っていくのかも重視していきたいです。

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