【第3期参加】場のプロセスをつかまえ、組織の進化に任せるファシリテーションを実践。これからも探究を続けたい

2023年6月より4ヶ月間にわたり「今ここから始まる組織進化の実践講座」<第3期>を開催しました。合宿形式による入門講座、さらにオンライン形式で学ぶ本講座を通じて得た学びの変遷について、お話を伺いました。

Mipox株式会社

取締役

中川 健二

会社を良くするために、首を突っ込んで突き詰めてみたい

──中川さんの現在のお仕事について、教えてください。

現在勤めているMipox株式会社は、「塗る・切る・磨く」というコア技術で世界を変えていきたいとの使命を掲げています。私は取締役です。

業務としては開発業務も含めたチーム「Future Of Mipox」での新規事業創出や工場を管掌しています。また弊社工場があるマレーシアの子会社で代表も務めています。

──当講座を受けようと思ったきっかけは何ですか?

私は、技術系職種で入社しました。その後に管理系の仕事も担当するようになって組織開発的な要素を見つけた感じです。「会社を良くしよう」と思うと首を突っ込まないといけないと思っていましたし、もっと突き詰めてみたいと自分の中で思っていました。

ToBeingsとは数年前からお付き合いがあり、チームコーチングを数ヶ月間受けていました。役員の関係性に対するアプローチをやっていただきましたが、数回やったからって言って「良くなりました」なんてわけはないじゃないですか。

そこでToBeings代表の橋本さんのアプローチを参考にし、車座になって話し合う役員合宿を月1回、2〜3年間やり続けたんです。しかし後から考えるとトレーニングや勉強をせずに、橋本さんと行った数回のアプローチだけを参考にやってみると、結果的に誰かが詰められるような状況になったり、関係性の話をするつもりが結果責任の話になってしまったりと、ある意味事故が起きてしまいました。その結果、人が辞めたりとか、傷ついたりとか思うようにうまくいかず「これはまずいぞ」という気持ちもあったんです。しっかり学んだり、トレーニングして自分が分かっていないとまずいと感じるようになりました。

そんな時に弊社社長から「組織進化の実践講座に、誰か1名参加させてみないか」と相談を受けました。最初は1名、別の社員に白羽の矢が立ったんです。しかし「これは私も行きたい」と思い、一緒に参加することになりました。

──2〜3年もの間、毎月役員合宿を行ったとは、率直にすごいと思います。そこまで続けられたモチベーションは何だったのでしょうか?

実は私が入社した後、弊社社長とはお互いに信頼関係が築けない時期があり、意見が対立して言い合いになったんです。ToBeingsにも入っていただき、社長とは対話の場を設けました。

その時、本当に真剣に話し合ったんですね。彼自身の真髄に触れるまでは「理解できない!」と正直怒りを覚えたこともありましたが、しっかり話してみると本当に人を大切にしているし「なんだ。そう思っていたんだ」と分かりました。

「トップダウンの組織ではなくて、みんなが自律して疾走できる会社にしたい」と真剣に言うもんですから。それだったら私はついていくよと。一緒にやりたいと伝えました。

何度か対話を重ねる中で、お互いにどんな会社にしたいかについて議論もしました。私が「小さい会社の社長がいっぱいいる、みたいな会社にしたい」と言うと、社長も似たようなことを言っていて。

「俺たち、これがやりたいんだよね。会社の目指すこととアライメントが取れている状態にしたいよね」とそんな話をけっこうしていたんです、二人で。

もしかして一人だったら続かないと思っているんですけど、社長と私とで相当握ったつもりがあるんですよ。この「役員合宿」に関しては、諦めずにやり続けましたね。

──相手が本当に大事にしている価値観を分かり合えたから、続けられたのでしょうか?

そう思いますけどね。結局は、「良い・悪い」じゃなくて、「好き・嫌い」に近いというか。そうした対話のやり方が、共感できるんだと思うんですよ。

何と言うか、みんなで幸せになりたいじゃない?仕事って私から見ていると──特に日本人の働き方を見ると──お金を得るための罰ゲームをやってるように見える人が多いんですよ。辛いことをやるから対価をもらえるみたいな。そうじゃないよね。

自己実現だったり、自分がこうしたいという思いの先に、結果として「世の中に貢献できて、報酬をいただいてそれをまた再投資する」という回し方がある。正しいとかあるべき姿っていうのかな。それを今、握っていきたい。めげそうになってへこんだことも、何回もありますけど、どうやったらいいんだろうとずっと続けている感じです。そうなりたいという姿を持っているから。

当講座に参加する前は、自分たちでやってみてもうまくいってなかったので「どうやったらうまくいくか」も言語化できていなかったかもしれません。最初に対話による役員合宿を始めたときから言っていたのは「ダニエル・キムの成功循環モデル」。社長も引っ張り出していた記憶があります。関係性からスタートしなきゃいけないと言いつつ、逆まわりするじゃないですか、あれって。

新しい人が入ってくると、急に利益の話になる。結果の話から始まって、行ったり来たりしているので。やっぱり「どうやったらできるんだろう。ヒントはないだろうか」とずっと思っていました、私自身が。たまたまToBeingsと出会い、藁をもつかむ思いでした。常に何かを探し続けていましたね。

事前動画を見て「何も分かっていなかった自分」に気が付いた

───藁をもつかむ思いで「何かヒントがないか」と本講座に飛び込んでみて、いかがでしたでしょうか?

ひと言で言うと「良かったな」というところで。それと「私は何も分かっていなかった」。

プロセスワーク的なアプローチの中で、何をセンシングして、何を場に返しているかは、今もできてるとは言えないんですけれども。「何をしようとしているか」の、端っこのところは少し気付けてきたと思っているんですよね。

講座を受ける前は、そんなことすら全くわかっていませんでした。「関係性」とか言いつつも、その場の対立が起きたときに「どうやって仲良くしようかな」とちょっと逃げてしまうじゃないですか。怖いですから。

そうした場面では全然、つかみに行かなかったし、つかんで「それをどうする?これが大事なところだ」という思いも全くなかったので。極論を言うと、議論の中身も大事だけど、それが起きているコンフリクトの状態に対してもっときちんとプロセスを見なければいけなかった。ところが、議論の中身ばかり話していたなという気はします。

──大切なポイントに気が付かれたのは、いつのタイミングだったのでしょうか?

講座が始まる前にあらかじめ共有される「事前動画」を見ている時ですね。

例えばプロセスワークの存在は知っていましたし、エッジについても言われたことがあったのは覚えていました。動画を見て「ああこういうことか」と。分かったつもりになってはいけませんが、事前動画を食い入るように見て、全部自分でメモを取りました。今でもすぐに見返せるようにしています。

──中川さんの場合は、参加前に2年間かけて自分で実践されてきたからこそ、事前動画を見ただけで気づくことがあったのではないでしょうか?

多分、そうでしょうね。教育研修もいろいろとやってきていますし、今もやっています。例えば、社会に出てから大学に行った方が学びになるとよく言われますよね。自分にとって何が必要かが分かるから。それに近いところがありますよね。

例えば私が好きなフレーズである「ハーフイン ハーフアウト」。社長がかなり熱くなって、怒っているようにみえた場面を思い出したんです。

役員の誰かが、立場の弱い相手の味方になって「そんなに強く責めなくても。そこまでにしておいた方が良いですよ」と言ったんですよね。社長は「そうじゃないんだよ。俺も、こいつのためだと思ってやっているんだよ」と返してくる。その時に「ハーフイン ハーフアウト」が入らないと、もっとヒートアップしていくんだと思いました。

一緒に参加した社員、部長、そして社長の変化

──講座を終えてみて、周りとの関係や場に変化はありましたか?

一緒に講座に参加した社員と、役員合宿に参加しました。今は四半期に1回行っています。「合宿の場にイニシャルシステムがある。ファシリテーションを手伝ってほしいので、オブザーバー役をお願いしたい」と頼むと、最初は怪訝な顔をされました。

彼からすると、私は取締役。立場が上なので、講座の成果を試されるかのように感じたんでしょう。「ただ助けてほしいだけだよ」と伝えると快諾してくれました。おかげさまで、2人でファシリテーターを務めたことで、今までつかめなかった瞬間をつかめた。100点満点ではないですが、だいぶ変化がありましたね。

講座の最中も、イヤな質問を私が場に出したんですよ。「組織進化の過程で脱落者が出てしまっても良いのか」と。実はこれにも背景がありました。長年弊社にいた社員が退職したんですよね。

そこに対する社員みんなの思いが、やはりいろいろと渦巻いていました。社長に尋ねて良いかどうかも、下手したら怖いじゃないですか。すると、普段そういうことを質問するのが苦手なタイプの部長が「社長はどう思ったんですか?なぜ役員はみんな冷静にしていられるですか?」と発言しました。すごく冷たさを感じていたらしかったんです。

その質問をつかまえるのは結構難しかったのですが、うまくつかんでくれて。それで社長もグッと下を見て「今まで感情をなるべく見ないようにしてたな」ってしみじみ言ったんですよね。

結局、社員数だけでも500人とその家族がいるわけです。「その時の思いに止まっていたら他の社員が困る。だからわざと考えないようにしていたのかもしれないね」と言った瞬間、「社長の立場を考えれば、それはそうですね」と部長も気づいた。確かになという空気が、パッとそこで流れましたね。

講座に参加した彼と私とが社長側にも立ちながら、両方の思いが出てくるような状況に少しはできたかなと。自分が得た学びを活かして「こうしてやろう、ここに落としてやろう」というのは全然違うと思ったので、本当に「組織の進化に任せよう」と思ったんですね。

だから、その場で起きたプロセスをちゃんとつかまえれば、私たちはみんなアウェアネスがあると思っていました。そしたら私がファシリテーターをしている時に、やっぱり彼が捕まえてくれました。微妙な空気のところをつかまえてくれて、ゆっくりと進めてくれたから開けたと思います。

これからもずっと続いていく探究の入り口に立てた

──今後さらに探究したいこと、目指したいことなどはありますか?

探究は、ずっと続くんじゃないですかね。うん。あとはもっと正直に言うと、ライフワークにしたいです。53歳になり、今は経営サイドにいるわけじゃないですか。労働市場も商品市場もどんどん世代が変わる中、若い人がジャッジした方が良いと思うんですよね。老害になりたくないのもありますけど。

次に私の役割がどこにあるかを、ここ何年か考えていました。もう1回プレーヤーに戻ってセールスをやるのも良いなと思っていましたが、「組織進化」に出会った。元々は技術系の仕事をやっていて、会社経営までやって、こうしたアプローチを通じた人との関わりを経験しました。3〜4つを掛け合わせられる人材は、そう多くないでしょう。するとそこに、何か世の中にお手伝いできる役割がありそうな気がしています。

──改めて振り返ってみて、この講座はどのような方に向いていると思いますか?

苦しみながら、実体験の中で求めている人が良いんでしょうね。HR系だったりOD(組織開発)系の参加者が多いかもしれませんが、誰でも向いていると思います。気が付ける・気が付けないは、立場や経験は関係ないじゃないですか。

そういう文脈だと「ポジションの高い人がファシリテーターを務めると、介入してきたと見られますね」と、以前社長と話していました。だからこそ、もっとたくさんの人が学ぶようになり、仲間が増えていくと良い気がしますけどね。

──最後に、本講座を受けてみて感じたことをお聞かせください。

この講座は、自分が探究したいことの入口に立たせてくれました。人って「なんでこうなっちゃうんだろう」と思うことが、いっぱいあるじゃないですか。子どもみたいなことを言いますが、知らない人たち同士でさえもケンカをしているのが嫌いなんですよ。すごく仲良くしたい。

でも自分も多分、人を傷つけたりしているという自覚もたくさんあって。みんなが「こうしたいね」と前を向けるチームを作りたいといつも思っていました。なかなかうまくはいかないけれども、もしかしたらそういう世界を作れるかもしれない“ヒントの入り口”に立たせてもらえたかなと感じています。

3期の仲間とも先日話しましたが、研修を受けると、会社の中でいわゆる「コストパフォーマンス」との言葉が出てくるわけですよね。「何を得てきたんだ」とか。そんな簡単なもんじゃないですよね。

「これを学びました」と語るのも、おこがましいと思っています。入口に立たせてもらったといったのは多分、その程度だと思うからなんですよ。全然、まだまだです。入口に立てるだけでもありがたいですよね。大体、仕事や人生ってそんなもんじゃないですか。5年10年経って下を向いたら「あれ?意外と登っていたな」と思うかもしれません。

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