入門講座レポート1〜関係性の土台と自身の現在地の確認〜

■概要

講座名   組織進化プロセスファシリテーター養成講座
入門講座  オリエンテーション
日程    2021年7月9日(金) 14:00-17:00
場所    オンライン

事前に動画を視聴し、ファシリテーションに必要な知識を習得。さらに実践を重ねます。

「時代の流れに合わせて、組織を変えていかなければ」と焦るトップ。「どうやって変えていけばいいのか」と悩む現場――――そうした上下関係の垣根を越えられないまま、課題を抱えている企業は少なくありません。

そうした課題の根本にある難しさへ自ら飛び込み、ファシリテーションをすることで、組織を新たなステージへと”進化”させるアプローチを学べるのが「組織進化プロセスファシリテーター養成講座」です。

ファシリテーションとは、メンバーの活動がスムーズにいくように支援し、働きかけていくスキルのこと。本講座では、組織内のメンバー全員がリーダーとして変革の担い手となる「組織進化」の実現に向け、目に見えないプロセスを掴みながらファシリテーションを進めていく方法を学んでいきます。

第1回目となるオリエンテーションは、「自分自身と組織が、ともに進化・変容していく入り口」と位置づけ、数名のグループに分かれた対話を中心に行なわれました。

多様な人材が集まった「出会いの場」

「組織進化プロセスファリシテーション養成講座」に参加された方々の背景、出身地、参加理由は多岐にわたり、多様性を感じさせる出会いとなりました。現場で日々活躍されている方はもちろん、経営トップや管理職として組織を動かしている方、コンサルタントなど、組織開発に対する経験・想いもそれぞれ異なっています。自己紹介でも、それぞれの組織におけるミッションと向き合っている様子が伝わってきました。

所属カテゴリー別に分類すると、次の4つに分かれました。参加背景のコメントとともにご紹介します。

<人事・HRBP>

LINE株式会社/開発領域のHRBP
「上司からの紹介で参加しました。部門内のメンバーと向き合うファシリテーション力を身につけたいです」
LINE株式会社/AIプロダクトチームのHRBP
「マーケティングを担当しています。課題の捉え方や、介入の仕方などを学びたいです」
株式会社ZOZO/組織開発チーム
「制度設計、組織課題の解決を担当しており、3月までエンジニアチームのリーダーを務めていました。今はキャリアチェンジのタイミングを迎えています」
エヌ・ティ・ティ・ビズリンク株式会社/総務・人事
「総務・人事に加えて、組織開発の仕事も担当しています。野中郁次郎先生の提唱されている知識マネジメントを学ぶためにも大切だと思い、参加しました」

<経営企画・戦略・役員>

大手コンサルティング会社/経営企画部門
「コーポレート系の子会社の経営企画部でリーダーをしています。現在、社内異動を含めて9社目で、いろいろな仕事や役割を担ってきました。組織内も転換期を迎えており、経営企画として組織開発もやるぞという流れになっています。そのため組織改革に向けて、自分が出せる価値を棚卸ししながらやってみたいと思い、参加しました」
アデコ株式会社/経営企画本部長
「今期からToBeingsさんに伴走していただいています。社外の方々との学び合える場を楽しみにしてきました」
城山観光株式会社/常務取締役 ホテルオペレーション本部担当
「九州にあるホテルで役員として、ホテル運営を担当しています。レストランをはじめ、ホテル内には多くの部署があり、悩みや課題と日々向き合っています。皆さんと一緒に学べるのが楽しみです」
株式会社 アマナ/事業戦略部
「育成プログラムを中心に、幅広い事業を担当している部署にいます。現在は、理念開発のチームに携わっており、チーム内で活かせる学びを得たいです」

<管理職>

株式会社クレハ/機能製品部部長
「自分のやりたいこと、部署内のメンバーたちのやりたいことが完全一致するにはどうしたらいいのか。そんな悩みを抱えています。解決のためには、ファシリテーションがカギになるのではと思い、参加しました」
アデコ株式会社/営業部部長
「上司から”ぜひ行ってみて”とすすめられて参加しましたが、良い機会だと思っています。組織の中期経営計画の実現に向けて、現在取り組んでいる最中です。現場でも実践しながら、学びを深めていきたいです」

<ToBeingsパートナーのコンサルタント・ファシリテーター>

・「対話の場づくり、地域づくりのワークショップを手がけながら、何枚も名刺を使い分けて幅広く活動しています。最近は梅農家も始めました」
・「組織開発コンサルタントとして、鹿児島を拠点に活動しています。複数の企業と有識者との双方向のコミュニケーションを担う、ステークホルダー・ダイアログなど開催しています」
・「組織開発コンサルタントとして、橋本さんの知恵を吸収しにきました」
・「コーチ、コンサルタントをしています。0期に参加したのですが、さらに探求を深めていきたいと思い、再受講することにしました」

ストーリーテーリングを通じて場を作っていく

現場でのファシリテーションを導入していくにあたって大切になるのが、「自分の中にある軸を意識する」ということ。組織内の役割だけでなく、雰囲気やキャラクター、コミュニケーションの仕方も含めたその人のあり方が、ファシリテーションの進め方に大きく影響します。

そこで、それぞれが積み重ねてきた歴史を紐解き、グループに分かれて話し合うワーク「ストーリーテーリング」に入っていきました。ストーリーテリングは、過去の自分を振り返り、グループ内のメンバーに印象的だったストーリーをシェアし、聴き合う手法です。組織変革を実際に行なう際も、最初にグループ内の心理的安全性を高められますし、集団としての想いを深め、リーダーシップを強くする大変有効な手法でもあります。また、ツール以上に、1人ひとりの人生を見つめ直す貴重な機会としてToBegingsが大切にしているものでもあります。

今回は、「組織や人に関わる自分を見つめ直す」をテーマに、このような切り口で振り返りました。

◎人や組織に関して「楽しいな」と思った経験
◎経営を立て直すなど、人や組織へ可能性を感じた瞬間
◎人や組織をまとめられずに諦めるなど、自分の中に残っている痛み

<進め方のポイント>
参加者が語り始める前に、橋本自身もストーリーシェアしながら、こんなポイントを伝えていました。

◎語り手
・これまであまり他人に開示していなかったエピソードについて、話してみましょう。大きな発見につながりやすくなります。
・自分のための時間として、できるだけ生身で、その瞬間を味わい、追体験するような感覚で臨みます。
・論理的な説明は一切必要なし。オチもいりません。感情のおもむくままに、エピソードを伝えましょう。

◎聞き手
・重要な役割を担います。まずは「なんでも話せる」と感じられる空間を意識して、作りましょう。
・全身全霊で相手に集中し、言葉の奥底から立ち上がってくる存在理由を感じ取ります。
・聴き終わってからは、話し手の存在意義や価値観、共感したポイントについてフィードバックします。自分の内省にもつながります。

「組織進化」につながるストーリー少しずつ気持ちに変化が表れ始めた

ストーリーテーリングを通じて、集団的な対話の中で浮かび上がってきたたくさんの微細な意識の変化や気づきを、個々人で見つめ直し、言語化することで、「自分という存在が、なぜ、どのように組織に対して思いを持っているのか」価値観や願いが自然に浮かび上がってきます。

グループでそれを分かち合うことで、想いは少しずつ確かなものになっていきます。話し終えた後に、参加者それぞれの感想を伺いました。ここに一部を紹介させていただきます。

――過去を振り返ると、良かった思い出よりも「痛みの記憶」が印象に残っています。同じように痛みの記憶を語ってくれた方の話に共鳴して、心がうずきました。後から振り返れば「良い経験だったな」と思えることも、辛い出来事が起こった瞬間は「どうでもいいよ」と思ってしまいますよね。そういう辛い痛みって、すでに組織のあらゆるところで起きています。私はそんな時、その場で解決の糸口を探すしかないような気がしているんです。まだはっきりと確信は持てませんが、そういう自分の新しいやり方としてファシリテーションスキルを身につけ、学んでいけたらいいなと思いました。

――仕事が忙しい中、しっかりと時間をとる講座だったため、実はあまり乗り気ではなかったんです。上司にすすめられて参加したのですが、話をしているうちに「やっぱり人間って面白いな」と思えてきました。普段はフラットなコミュニケーションが中心で、相手に深く関わるタイプではありません。普段の会話をしている時は、「みんないい人じゃん、面白いじゃん」と感じているはずなのに、チームとしてうまくいっていないのはなぜなんだろう…ストーリーテーリングを通じて、そんなことを考えていました。まずは自分の周りから、良いチームを作っていけるようにしたいですね。

――初対面の方に、的確なフィードバックをいただいて思わずびっくりしました。「価値観を大切にしたい」というストーリーを語っていたのですが、それを受けて「もしかしたら想定外のものに出会うことが、楽しみなんじゃないですか?」と指摘されて「けっこうあっているかも!」と。確かに、この講座に参加させていただいた理由も「想定外の自分と出会い、組織のあり方を学びたい」との気持ちからでした。既定路線の研修ではなく、違った感覚で得られる学びが欲しいんです。改めて皆さんのお話を聴いて「人ありきの組織を作りたい」との気持ちが、強くなりました。そうした組織が立ち現れるにはどうすべきなのか、今後も探求したいです。

――社内ではなかなか、こういう深い話ってできないんですよね。答えのない問いに向き合い、自由に話せるのも参加の楽しみの1つになっていました。ストーリーテーリングの場でもじっくり話しましたが、「やっぱり一緒に働いている人が、ハッピーになれる職場を作りたいな」と思いました。思っていることを自由に話せたり、やりたいことに自由に挑戦したりできる会社が理想ですね。所属している今の会社は、目の前の課題よりも「人間関係」「感情」の部分がネックになっていて、経営課題の解決につながっていない。だからこそ、絡まった部分を時ほぐしていかなければうまく回っていかないんだなと気がつきました。これからは、「人ってこういうふうに考えていくんだ」というプロセスについて、もっと吸収していきたいですね。

組織は、時に必要以上のパワーを巻き起こす装置となって、社会にも個人にもインパクトを与えます。そうしたエネルギーが沸き起こる瞬間に、1人ひとりの胸の中で何が起こっているのか。これからさらなる探求を続け、皆さんと深めていきたいと願っています。

そして最後に、次回以降の講座につながる布石として、新たなアプローチもご紹介しました。

ハイドリーム/ロードリームから、望みをクリアにする

心理学では、「こうなって欲しい」と抱いている期待・願い・最高の未来を「ハイドリーム」、逆に「こうなったら嫌だ」と思う不安、恐れ・最悪の未来をロードリームと言います。この概念は、組織開発でも、未来の具体的な姿を明確化に語ることで、ストーリーテリングで耕された願いに灯が灯り、アクションに目が向くためのアプローチとして、重用されています。

今回は、半年間歩んでいくオリエンテーションの締めくくりであり、また各々が組織進化に向かうスタートラインとして、自分が向き合っている組織課題や、今回の講座に向けて、自分のハイドリームやロードリームの視点を活用しながら、2人1組のペアとなってお互いの想いを引き出しあい、想いをクリアにしていったところで、オリエンテーションが終了しました。

第2回目のテーマは、【組織全体の縮図であるような場でのファシリテーション、組織進化体験】。誰かを変えようとするのではなく、皆で創る組織進化への未知なるアプローチが始まります。

Direction 丹羽 妙(弊社広報)
Writing 林 美夢(ライター)

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