セミナーレポート|2022/7/15【組織開発実践者に聴く!】組織活性化を進める上での壁とその乗り越え方#2

■開催日時/概要

【組織開発実践者に聴く!】組織活性化を進める上での壁とその乗り越え方#2

日程:2022年7月15日(金)16:00〜17:30
場所:オンライン(zoom開催)

組織変革の理論や方法論について改めて言語化し、体系立てて考えてみたいとの背景から、セミナー開催の取り組みを始めたToBeings。「本を読んでも分からない」「切り口が難しい」との声も多い組織開発の世界について、参加者の皆さんとともに考えていこうとしています。前回に引き続き、セミナーに登壇いただいたのは株式会社ZOZO 組織開発ブロック長 小金 蔵人さん。代表の橋本が以前開催した「組織進化の実践講座」の0期生として参加し、持続的な企業変革に挑み続けています。

「組織は、対話と合意形成の連続だと思う」と語っていた小金さん。気づいたら40代になり、「自分がやりたい仕事は結局、一緒に働く仲間を盛り上げたいということ。この数年間、命懸けで組織と向き合って、人生をかけてやりたいと思えてきた」と言います。

今回開催したセミナーは、グループワークの時間を中心とした対話型形式。組織開発について深く考えていくための「問い」をテーマに、さまざまな意見が交わされていました。

組織開発を探求するための「問い」

小グループに分かれて参加者同士で自己紹介をした後は、モニターに投影されたキーワードを見ながら、日々気になっている「問い」について話し合っていただきました。その後、寄せられた3つの質問に、小金さん、橋本が答えていきました。

Q|組織開発のスタートとゴールは、どうやって決める?
スタートとゴールを決めようとオープンに話をしたくても、なかなかはっきりと言えません。「本音はこうです」と一石を投じたい気持ちはあり、理解もしています。が、現実は難しい・・・理想と現実のギャップに、どうメスを入れれば良いのでしょう?

橋本さん:

当社で手がけている組織変革プロジェクトは、ゴールが定まった状態で始まることがほぼありません。むしろ「これがゴールだね」とメンバー全員で握れていたらプロジェクトの7割ぐらいは終了です。

本来はメンバーが抱えている状況も、目指したいゴールも、それぞれ異なるもの。例えばトップがDXを進めたいと思っていても、現場では「もっと手前で解決したい課題があるのに」と感じているかもしれない。だからこそ全員がオープンに対話して、ゴールを共有するプロセスから始めていくようにしているんです。

スタートはやはり最初の部分。組織変革のための対話会やワークショップをやろうと企画した際に、「どんな反応がくるだろう?」と不安になったりしませんか。そういうふうにぶつかってしまう壁に気づくところから、始まります。個人がぶつかる壁は、組織全体の課題であり、縮図なんです。

小金さん:

永遠にスタートとゴールがないのが、組織開発。組織は作った瞬間から、もう問題が起こっているものです。そしてどこまでやるのか、あるいはやらないのかは結局「組織内の対話」で決まります。対話と合意形成の中で、すべてが決まるんですよね。

────組織変革のネックになる部分は、行動を起こす際に「最初の縮図」となって現れます。「組織変革」に近道はありません。課題から目をそらさず、どこまで変革を進めるのかについて対話を重ね、少しずつ合意していくのです。場合によっては数年の時間をかけながら、ゆっくりと進化していきます。

Q|中間管理職をどう育成すれば良いのか、分からない。
プレイヤーとして成果を出しながら、複数の部下を1人ひとり丁寧に見て、育てていく。さらに部門全体の業績達成に向けて、責任を果たす役割も担う・・・など、中間管理職に業務負担が集中してしまいます。管理職本人のやる気・情熱を解き放ち、育成につなげていく方法はありますか?

小金さん:

管理職はまず忙しいですし、見本もなく「マネジメントをやって」と言われることが多いですよね。やはり、マネジメントの基本である「3つの武器」は、きちんと使いこなせた方が良いと思います。

1つはMBO、目標管理です。2つめは1on1。人をマネジメントするならば大切です。さらに3つめは組織サーベイ。きちんと活かし、使えるような状態にしましょう。そうしたマネージャー支援がないまま、責任ばかりが増えていくのは大変ですよ。

橋本さん:

「この組織がうまくいかないのは、中間管理職のせいだ」という言葉が出たら、一旦立ち止まって考えるべきです。「中間管理職がダメなんだよ。だから研修を入れよう」となって、施策が打たれ、業務に集中できる時間がなくなり、負のスパイラルへ・・・こんなストーリーをよく耳にします。

「モンスターみたいなあの人がいなくなれば良いのに」と思う気持ちは本音かもしれない。しかしモンスターになったのは、何か理由があったからなんですよ。例えば会社のトップから無理難題を課せられた役員が、同じように強権的な態度でマネージャーに接しているのかもしれない。悪いところを点で見るのではなく、周囲の状況まで含めて組織全体を含めて考えていきます。そうすると、組織課題の背景も見え、中間管理職とどう向き合えば良いのかも分かってくるでしょう。

────「あいつが悪い。悪いところを取り除けば良くなるはずだ」と短絡的に考えてしまいたくなる気持ちは、誰しも思い当たるのではないでしょうか。しかし組織に根深く浸透している課題は、表面を取り繕うだけでは解決しません。一度は活性化したように見えても、すぐに元へと戻ってしまうでしょう。

Q|トップの影響力が大きい「組織開発」。合意形成はどう取る?
組織のトップが与える影響力は、やはり大きなもの。トップといかに合意形成を行ない、「変えていくんだ」という覚悟を持ってもらえるかどうかが、組織開発の成否を分けると感じています。合意形成は、どのように進めれば良いのでしょうか?

橋本さん:

トップとの合意形成は、説得させようとしない方が良いですね。合意形成とは、つまり対話です。組織の命題は「ロマンとそろばん」。「メンバーみんなの気持ちも大切。一方で業績も上げないといけない」という二つを両立させていけるかどうかが、問われます。どうすればバランスの良いポジションが取れるかが、組織の解になるんですよね。

トップとの合意形成は、入り口のように見えて実はゴールでもある。それくらい大切なものだから、少しずつ対応していけると良いのではないかと思っています。

小金さん:

「組織の課題なんだから、トップがどうにかしないと」と思った瞬間に、当事者意識がなくなってしまうような気がします。特定の誰かと取り組めなければ、組織は活性化しない。その視点がすでに、行動を止めてしまっています。

悪気はなく、他責になってしまうんですよね。トップにリーダーシップを発揮してもらうには、部下が「これってトップの責任では?みんなで良い組織にしましょうよ」というフォロワーシップ、コミュニティシップを発揮することも必要ですね。

全員に責任を配り終えた時に、組織開発は初めて機能すると思います。内部の実践者として、やれるところからやってみる。それで良いと思います。

────影響力が大きいからこそ、つい「トップがしっかりしてくれれば」と思ってしまいがちです。しかしよく考えてみれば、組織を構成しているのはトップだけではありません。お互いの存在を意識し、相互作用が生まれることによって、新たな組織のあり方が誕生する可能性を感じました。

まずは自分から、感情を素直に表してみる

参加者の方々からは、さまざまな声をいただきました。同じ悩みを抱えた者同士の対話を通じて、多くの発見があった様子も伺えます。各々の組織の中で、学びを活かしていただければ幸いです。

最後に、小金さんの言葉が非常に印象に残りました。「ネガティブな感情も素直に吐露してもらうには、どうすれば良いか」との問いへの、答えです。

小金さん:

自分がまず率先して、言ってしまいましょう。「めんどくさい」って言っても、良いんです。

私たちは機械ではありません。感情を持つ人間です。しかし感情に流されてばかりでは、ビジネスは成り立ちません。その心地よいバランスを皆で考え続けることは、大変さと楽しさの両方を兼ね備えているように感じました。

組織開発は一筋縄ではいかないもの。だからこそ、興味も尽きないものなのです。

ToBeings公式noteではセミナー速報をお届けしています。こちらもぜひご覧ください。

Writing 林 美夢(ライター)

この記事を書いた人